決断に判断に行く先と

「・・・やる気があることを悪いことだとは言わん。だがバチカルの城から勝手に脱け出したことを始めとして、ナタリアは自分のやりたいことだけを優先するし他の事を些事と見なしてしまい様々な事を疎かにしてしまう・・・結婚して王座について二十年以上連れ添ってきたが、そういったことを注意しても早く済めばそれでいいだろうとかそれよりこちらの方が重要でしょうという言葉ばかりしか返ってこなかった。そしてそれはこちらのナタリアも同様か、それ以上にタチが悪くなるのは目に見えている・・・俺へのアピールを強くしてくるという意味でだ」
「アピールって・・・自分がこれだけちゃんとやれるってアッシュに見てもらいたいってことか?」
「それで間違いないが、正確には俺に必要な存在であると思わせたいといった所だ。俺が特にナタリアに対して強い気持ちを抱いているといったようにしていない以上、自分の存在意義を俺に見せつけて自分に惹き付けたいと思う形にしてな」
「・・・でもそんな風に行動されても今言ったような事になるだろうから、アッシュはナタリアに権力を持たせないようにするっていうことか・・・」
「そういうことだ」
そしてナタリアがいかに自分に対する想いも併せて行動してくるかと予想するアッシュに、ルークも反論出来ずに深くその言葉を受け入れるしかなかった。聞けば聞くほどにナタリアの性質が厄介でいて、放っておく訳にはいかないということが分かるために。
「・・・その辺りに関しては後々アッシュがやることですから、アッシュに任せることにしましょう。我々がこうしろと口出しして決めさせることではありませんし、当面の問題がありますからね」
「当面の問題って、明日付いてくるか来ないかのことか?」
「いえ、その前段階として今日の夜辺りにガイが貴殿方二人ともかどちらかに接触するのではないかと私は考えています」
「・・・それってあまり良くない事になる可能性もあるよな?」
「えぇ、あくまで想像ですがね」
そうしてジェイドが話題転換にとガイの事を口にすると、ルークが表情を引き締めぼかした表現で返したことに頷き返す・・・ガイが何らかの考えから二人に害意を持って行動する事も有り得ると二人ともに見て考えた為に。
「確かに可能性は少なくはあるが、有り得ないとは言い切れんな。今のあいつは俺とルークの真実を知った上で、ヴァンとの事に板挟みになっている現状だ。それでも付いてくると言った辺りにあいつなりにどうにか事態の打開をしたいと考えているんだろうが、だからと言ってこちらがそれを避けていたらガイのことはどうもならんだろう」
「ならある程度の危険は承知でガイに向き合うべきじゃあるだろうとは思うけど、ガイにどう接してやるかってのが難しいんだよな・・・下手な言葉をかけるとそれこそ凶行に移りかねないけど、これって今となって考えると前のガイも俺達やファブレに対して行動していたってことだから、今更ながらにゾッとするな・・・」
「・・・確かにヴァンに連れ去られる時までを考えれば、当時の俺だったなら寝込みを襲われていたなら何も出来ずに殺されていただろうな・・・」
そんな二人にアッシュも同意しつつ避けられないことだと言うと、今となってガイの復讐の刃が向けられた時の事を思うルークの苦い声にアッシュもまた表情を少し歪めつつ同意する。復讐を突発的にでも計画的にでも行われていたならどうなっていたか・・・そう考えると二人も決して安穏と出来るような考えにはならなかったために。









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