決断に判断に行く先と

「こちらのティアはいくらヴァンが悪どいことをしていると考えるように言っても、奴を殺すことに関してを割り切った考えにまで行き着くだろうとは今のルークの話を聞いたのもあってとても思えん。それこそ精々今までやったことは兄さんが悪いことをしないかどうかを確かめるためで、そして悪いことをしたなら改めてもらうように言えばいいし何より兄さんは生かすべき人だ・・・そういったようにあらゆる言葉や言い訳を用い、ヴァンを殺させないようにとさせるだろう。だがどちらのヴァンにも言えることだが、妹可愛さでその言葉一つで翻す筈がないどころか命が助かったなら次の手を打とうとどうにかあがくのは目に見えている。そして前のあのキムラスカ兵士に扮装させて自爆特攻させた時のような目に見える惨事が引き起こされても、どうにか兄の命だけはと懇願してくるだろう・・・情けをかけてそういった裏切りがあったのに、自分が死んでほしくないという気持ち一つで全て押し通そうと全く周りを見ない形でだ」
「そしてそんなティアだからこそ、謡将が死んだとしたなら貴方は自殺を選びかねないと言い出したと言うことでしょうが・・・同時に我々へと敵意と刃を向けてくることも否定出来ないでしょうね。私が説得するから生かしてほしいと願ったのに、それを反故にするなんて・・・と」
「それもまた十分に考えられるが、どちらにしてもあのヴァンへの傾倒の具合を考えれば決して良くない事態を引き起こすのは確実であり、そうでなくするためには・・・前のルークのように自覚はなかったとしても寄り掛かれる存在がいることだろうが、ハッキリ言ってそれは悪手以外の何物でもない。むしろ依存の対象が誰であろうともヴァンの代わりなのだからとそちらに依存の度合いが大きくなっていき、そんなヴァンとの比較を始めていきロクな結末にならんのはまず避けられんだろうな」
「うわぁ・・・生々しすぎて全く否定の言葉が出てこない・・・」
その上でいかにティアが行動するかに考えるか、そしてどうにかなってもどうしようもない結末になる可能性が高い・・・そう口にしていくアッシュとジェイドのやり取りに、ルークは力なくうなだれるしかなかった。あまりにもティアのヴァン大事の思考回路が酷すぎることに。
「お前がそうなる気持ちも分かるが、そもそもを言うならティアがヴァンに依存をしているという自覚が無いのがまず問題なんだ。元々のティアの方も兄の真意を聞くためだけにバチカルまで来て譜歌を用いて屋敷を襲い、挙げ句の果てには力量の差を知っているからとは言え遠慮のない攻撃を兄に見舞い話をしろといったようなことを宣った・・・そこでヴァンが譜歌に耐えきれずに崩れ落ちていたなら、その攻撃を受けて死ぬことも全く有り得ないことではなかった訳でも無かったのにだ」
「あぁ・・・確かに師匠も譜歌の影響は受けてたな、あの時は・・・」
「あぁ。そしてティアの性格上に力量から考えれば譜歌やその時の攻撃が手加減された物だとは思えない上、そうしたらしたでで譜歌はろくな効果が出ていなかっただろう・・・まぁそこはさておきとして、そういったことから心の中では実力もあるけど優しいヴァンなら自分の言うことなら聞いてくれるだろうし説得すれば大丈夫とティアは考え、俺達に付いてくるだろう。そしてどうなるかに関しては今言ったような感じになるだろうな」
「・・・付いてきてもらうのはいいけど、そんな理由だと考えるとあんまりいい気がしねぇ・・・」
それでそんなヴァンへの気持ちが強いことが問題としつつもだから付いてくるだろうと確信めいたように言うアッシュに、ルークは脱力しながら複雑さを口にした。決して明るく迎え入れられるような事情ではない事が分かるために。









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