「そもそもを言うならお前がバチカルから抜け出したこともそうだが、ルーク達と共にアクゼリュスに向かっていたことなどバチカルからいなくなっていた時に叔父上達は把握していただろう。しかしそれで叔父上達がお前を惜しんだり止めたいと思っていたならケセドニアか、最低カイツールの港に連絡してナタリアの引き留めか抵抗した場合は最悪拘束に切り替えろといった命令の入った書状を送っていただろう。しかしそんな風にキムラスカの誰かがお前を止めに来たと言ったことはあったか？」
「そ、それは・・・あり、ませんでした・・・」
アッシュはまずはというように誰か止めに来たかと聞くが、ここまですんなり来れたことを否定出来ずにナタリアは目を泳がせながら答える。
「あ～・・・そう言えばそう考えると叔父上達から何かこれまでで伝言すらなかったのってそういうことなのかって言いてぇけど、ナタリアが俺達に付いていってないとかバチカルから出てったことに気付いてないだけ・・・みたいなことは流石にないよな？」
「あるわけないでしょう。ナタリアは王女殿下という身分であり、国にとってはそれこそ重要人物としてランクの高い位置に属している人物です。そんな人物がいなくなっても別にいいかとのほほんとすることなど有り得ないですし、それが広まるのもまた時間の問題・・・そういったことから事情を知らない人物達の不安に不審を煽りかねませんから、それこそナタリアにはアクゼリュスに行ったというように周囲にインゴベルト陛下達は伝えたのだと思いますよ。勝手に城を抜け出した上で無理矢理連れ戻したとしても文句であったり色々と言うのは目に見えていますからね」
「だ、だから私は見捨てられたと・・・！？」
「むしろ事実を知らないままにバチカルに残っていたなら、貴女はモースやキムラスカにとって都合のいい存在だと見られていたでしょう。もし謡将の思ったように事が進んだなら、想像する限り貴女がルークや兵の弔い合戦だと意気を上げて戦争に真っ先に取り組むだろうことは容易に想像がつきますからね」
「あ～、確かに和平を餌に騙されたって風にも言ってメチャクチャ怒りそうじゃあるな・・・ただそれもナタリアが素直に帰るなんて風に思えなかったから、叔父上達はモースの言葉もあって連れ戻すように命令を下さなかったってことか」
「っ！」
続けてルークの疑問の言葉からジェイドは答えを返すのだが、その中身にまた衝撃をナタリアは受けて呆然としたよいに体を震わせた・・・嘘偽りなく自分は見捨てられたのだと、希望を持てるはずのない言葉の数々を受けて。
「・・・俺の言いたいことを二人が大方代返するような形になったが、お前がルークと共に死ぬことを求められたことに変わりはない。そしてそれを理解しないままにでもそうだが、理解をした上でお前がバチカルにいざ戻って預言の為に行動をするのを止めてほしい・・・などと言った所で娘という存在を殺すことまで選んだ叔父上達が、そんなあっさりとその言葉一つで娘可愛さに翻し自分達の身は安全に違いないというようにでも思っているなら付いてくるな。酷な事を言うようだが、まずそんな言葉は受け入れられんだろうことは目に見えていることに加えて改めて叔父上達から死を望む声が向けられる可能性が高いからな」
「お、お父様が私を・・・！？」
「叔父上達にモースが望むのはあくまで預言に詠まれた戦争だ。俺にルークにマルクトの死や滅びを黙認出来ないなら、例えバチカルに戻ってももうお前を殺してしまう方がいいと考えるのが叔父上達からしての妥当な判断になるのは目に見えている。それを見越してこう言っているんだ」
「・・・っ！」
そして再びアッシュがその流れを汲んだ上で話をするが、その中身に顔色を青くしてまた体を震わせだす。想像するだけでもあまりにも残酷な父親が自分の死を望むという光景を思い浮かべる形で。









.