かつての想いと変える現在

「嘘だと言いたい気持ちはそちらの気持ちから言わせれば当然だろう。だがそっちの二人はヴァンに襲われたことから、それが戯言だと一蹴出来ないことは分かる筈だが」
「・・・確かにそうですね。謡将が私と彼に剣を向け、殺しにかかったのは事実です。少なくともキムラスカはまだしも、謡将が何かを元々から企んでいてアクゼリュスで我々を襲ったのでしょうね。現にキムラスカから派遣されてきた兵士達は全て殺したと謡将から聞きましたからね」
「兄さんが・・・!?」
「事実だ。証拠が見たいと言うなら後で案内してやる。ヴァンが殺したキムラスカ兵士達の死体がある場へとな」
「っ・・・!」
アッシュはそれは嘘ではないと言いつつ話を二人が襲われたこととキムラスカ兵士の死について口にすると、ティアは表情を青くする。ヴァンがそうしたということもそうだが、大量の人の死体を想像したくもないのだろう。
「な、なんでヴァンはそんなことをしたのですか!?百歩譲って貴方の言うことが本当だとしたなら、キムラスカの兵士を連れていく理由も殺す意味などないではありませんか!」
「意味ならある・・・表向きはこのアクゼリュスにはマルクトの要請を受けての救援の為に兵士を派遣したのに、聖なる焔の光と共に死んだという犠牲者の名目を取ってもらった方がマルクトへの復讐という大義が成立するからだ。とは言え流石にキムラスカとしても兵力をイタズラに減らしたくはないだろうから、何らかの問題を抱えている兵であったり預言に詠まれていると言った理由から最初から死んでもらうことを願われて派遣されたのだろう。まぁ先んじてヴァンが兵達を殺したのは下手に敵に回りかねない奴らが生きていたなら、後の障害になりかねんと思ってただろうな。一例として考えられるのは万が一ヴァンの手から逃れてアクゼリュスから逃げ出し、キムラスカにダアトが仕掛けたことだと噂を流され戦争の空気に水を差されることだ」
「なっ・・・そ、そんなことの為に・・・!?」
「そんなことの為にと言うが、戦争の預言には更に続きがある・・・それはキムラスカがマルクトをその戦争で滅ぼすといった中身の預言だ」
「「「「!?」」」」
すかさずナタリアは何故ヴァンがキムラスカ兵を殺さなければならないのかと叫ぶが、生かす理由もないかそれ以上に預言に先がある・・・そう、戦争でのキムラスカの勝利にマルクトの滅亡という佐木を告げるとルーク達二人はフリだけでティア達は最大限の驚愕を表情に浮かべた。
「そういったことを考えれば例えアクゼリュスに救援に回されていなくとも、今回派遣されていたキムラスカ兵達は大方その時の戦場の最前線送りが関の山だっただろう。真っ先に死ぬことを望まれはせずとも、死んでも問題ないと送り出されていたのは間違いないだろうな」
「そ、そんな・・・う、嘘ですわそんなこと・・・」
「今のはあくまでも俺の推測でしかないが、そこの二人が襲われて兵士が死んだことは紛れもない事実だ。それは否定は出来んだろう?」
「っ・・・!」
アッシュは預言については一先ずとどちらにせよ兵の命は無かったことを強調し、ナタリアは否定の出来ない事実を前に口をつぐむしかなかった。事実兵の命が失われてしまっている現状が目の前の自身らにのし掛かってきた為に。










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