かつての想いと変える現在

そうしてヴァンの横を通り操作盤の前に立ったジェイドを見て、ヴァンはルークの隣の方へと移動する。そして・・・



「・・・さぁ!力を解放しろ、愚かなレプリカルークよ!」



・・・最早隠す気もない嘲笑を浮かべた表情で簡潔にヴァンは暗示のキーワードの言葉を叫びパッセージリングの方に指を指す、のだが・・・
「・・・はぁ?いきなり何言ってんだよ、オッサン・・・」
「な、何・・・!?」
(・・・俺の説得もジェイドの排除も何もなく、単純に力押しで来たか・・・)
・・・紫の力で暗示の意味が無くなっているルークはとぼけたフリをし、ヴァンが絶句しているその様子を内心で残念に思っていた。別に進んで騙されたい訳でもないが、だからといってこうも考えのないと分かる行動をヴァンに取っては欲しくはなかったと。
「・・・愚かなレプリカルーク、ですか・・・それはどういう意味でしょうか、謡将?」
「っ、くっ・・・!」
‘ギィンッ!’
「何っ・・・!?」
「あっぶねぇ・・・何すんだよ、オッサン・・・!」
そんな所に振り返って油断ない視線と共に槍を出すジェイドにヴァンは一瞬の間の後に剣を抜きルークに振り抜くが、ルークもすかさず剣を抜いて平然と受け止めたことに愕然とした表情を見せる。だがすぐにヴァンは苦々しげに表情を切り替えると出口側へとバックステップし、ルークもまたジェイドの側に寄る。
「・・・油断しないでください。どうやら謡将は我々を殺すつもりのようです」
「そりゃ今剣を受けたんだから分かるけど、なんでいきなり・・・!」
「大方の予想ですが、元々ここで連れてきた兵士もろとも我々を殺すつもりだったのでしょう・・・ただ街の様子からして、もう兵士達は始末されているでしょうね」
「流石に死霊使いと呼ばれるだけの事はある・・・その通り、兵士達は既に始末している」
「そうだと平然と返すということは、我々も始末するつもりだからですか」
「死人に口なし、ですからね・・・!」
二人でヴァンと向き合いながら三人は話を進め、ヴァンは次第に不敵な笑みへと表情を変える。その言葉通り、自分が二人を殺せると信じて疑っていないのだろう。だが・・・
「・・・あちらから来ている方々も殺すと言うのですか?」
「何?・・・なっ!?アッシュ、何故ここに!?」
「・・・どうやら間に合ったようだな」
・・・ジェイドが入口の方を指差してヴァンが振り向くと、そこに走って来たのは後ろにティア達を引き連れたアッシュで少しホッとしたような声を漏らす。
「・・・何故ここに、という言葉に対してはこう答えてやる。俺はお前には従わないと決めたからだ!」
「なっ・・・気が狂ったか、アッシュ!?」
「俺の気は確かだ!そしてお前の妹達もここに来ている・・・その意味が分かるか!?」
「ぐっ・・・!?」
「兄さん・・・!」
そうしてアッシュとヴァンが短いながらも会話をする中で後ろにいるティアの事を言われると、ヴァンはくぐもった声を漏らしてティアは泣きそうな声を向ける。
「・・・チッ!」
‘ピュウイッ!’
「あっ、兄さん!」
そうしてヴァンが取った手段は以前のように指笛で魔物を呼び、その魔物に捕まり飛んで逃げることでティアがその様子に声を上げる。



‘ズブッ’



「がぁっ・・・!?」
「えっ・・・!?」
・・・だが次の瞬間、魔物に捕まり飛んでいたヴァンの腹にジェイドが投げた槍が刺さりヴァンは苦悶の声を上げ、ティアは衝撃の光景に驚き絶句するしかなかった。いきなり何が起きたのか分からないというように。









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