行くべき先と決める決意

・・・そうしてルークはリグレットの死体を抱き上げ、通り道の視界に入らない崖の死角に置いてジェイドの元に戻った。
「・・・すごいですね。実際に人が独力で空を飛べる姿を見てみるとそう感じます」
「幻想郷じゃ有力者が空を飛ぶのは珍しくはないって言ったけど、やっぱそういったように言われると幻想郷に慣れたんだなって思うよ」
ジェイドはその姿に素直に感心の言葉を漏らし、ルークは苦笑気味に返す。認識の違いを改めて感じたことに対して。
「・・・一つ聞きますが、空を飛ぶのは私にも出来ますか?」
「ん~・・・多分ジェイドなら出来ないことはないと思うけどちょっと時間がかかると思うし、下手にこっちで空を飛べるようになるとあんまりいいことになる予感がしないと思うんだよ・・・だから人前で飛ばないって約束出来るんなら教えてもいいかなとは思うけど・・・」
「・・・いえ、そう聞いて教えてもらわない方がいいと感じました。過ぎたるは及ばざるが如しと言いますが、貴方の予感する通り人が空を飛べるというのは希望を与えるだけならまだしも良からぬことまで引き起こす可能性も有り得ますからね」
そんなルークにジェイドは空を自分も飛べるようになれるかを聞くが、無いとは言わないにしても周りの事を気にした風に返してくるルークに一転して遠慮すると返す。






・・・ルークが危惧してジェイドが察したのは、空を飛ぶことが意識の格差を生んで人と人の軋轢を生みかねないことや空を飛べることを利用しようという輩が出てきかねない事である。

ルーク自身空を飛べるようになるのに結構時間がかかったが、あくまでもその飛びかたを教えてくれた幽々子を始めとした者達からは元々ルークには飛べるだけの素養や力量があったからだと言われた。でなかったら何の力も持たない人間でも飛びかたを教われば誰でも空を飛べることになり、別段空を飛ぶことなど特別な物でもなくなることだとも。それに空を飛べるということは元々飛べる鳥のような存在ならともかく、人型の作り的に飛べるはずのない存在が飛ぶから不思議だったり怪奇現象だといった風に見られるのだ。

そういった風に考えてみると空を飛べるようになることは空を飛べない者からすれば羨望になるか、畏怖になるか、嫉妬になるか、利用出来る物だと見られるか・・・純粋に物事を見られる者だけならまだいいかもしれないが、そうでない者からしたなら良からぬ思いを抱く可能性は決して低くないとルークもジェイドも見ている。

現に単純な話として、空を飛べずに攻撃も届かせることの出来ない集団達の中に爆弾を上から投げ入れればどうなるかなど想像に難くはない・・・そういった意味では幻想郷での争い事はあくまでも国と国の威信をかけたものではなく、個人や個人の所属する団体同士の戦いであり弾幕と呼ばれる個人が持っているエネルギーや道具を飛び道具として放つ弾幕ごっこと呼ばれる戦いでやることが公然のルールとなっていて、下手に弾幕ごっこ以外で揉め事を起こすようであれば紫もそうだが博麗の巫女と呼ばれる存在に弾幕ごっこ抜きの本気で殺されることになりかねないので、そういった手段を取る者はまずいないのである。

だがこのオールドラントでならどういうことになるか・・・そういったことを二人が感じた上で考えた結果が空を飛べない方がいいとなったのである。









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