焔の存在を幻想にさせぬ為に

「それだけのことでかと思われるかもしれませんが、少しの変化からもたらされるバタフライエフェクトというものはそれほどに恐ろしい物なのですわ。それに元々を考えてください、アッシュ・・・貴方からすれば謡将へ反旗を翻したのは理由はどうあれ、謡将の元にはいられないという不信感を抱いたのでしょう?様々な事を考えた上で、謡将には付いていけないと選択して」
「それは、確かだが・・・」
「そう。ですがその平行世界での貴方は謡将への信頼をほとんど揺るがしていません。むしろ最初から最後まで謡将側に付いていた事も珍しくない程です。そしてそれでも何らかの偶然から謡将に敵対をすることも無いわけではありませんでしたが、謡将が許すと言えば即座に身を翻す事も多々ありましたわ」
「っ・・・何をやっているんだ、そこの俺は・・・!」
「それだけ謡将の影響が出ている、という事です」
そんな驚きの様子に紫はアッシュへいかに平行世界のアッシュがヴァンに傾倒しているかを説明していき、たまらず怒りを滲ませる様子にそれこそだと口にする。
「こちらの謡将もそちらの謡将も別に演技が出来ない訳ではありませんが、認識の差によりこういった違いが出ています。無論平行世界の謡将はそのようにそちらのアッシュ達に好かれる反面、その世界のルークを始めとしてあまり好いていない者もいるということもあり、味方が出来やすくもあり敵とは言わずとも嫌われやすいという一面も持っています」
「待ってください・・・ルークに対して事務的な態度を取っているというように言いましたが、ということはそこのルークと謡将は師匠と弟子と言うわけではないのですか?」
「表面上は以前からの付き合いがあるからと時折来ては剣を教えてこそはいますが、アッシュを手に入れたからか以前とは違うから慎重に行きましょうとあからさまに訓練の回数を減らした上に親身な態度も見せることなく接しています。それこそ事務的な物と言ったように言葉遣いは距離を置いたように丁寧な物とし、剣の訓練もアッシュを手に入れた延長線上でもう力を入れる必要はないからと無茶をしないという名目で大して力を入れずにしか行っていません。そのようなものですからそこのルークは謡将に対してなついてはおらず、精々がたまに屋敷に来てやる気のない剣術訓練をしに来るおっさん程度の認識ですわ」
「そうなのですか・・・こちらのルークを知っているからこそ、あまりイメージが湧きませんね・・・」
ただそんなヴァンだからルークを始めとした面々に好かれていないと紫が言うとジェイドは信じられないと漏らすが、その対応のずさんさを返されてそうなのかと納得せざるを得なかった。気持ちを引き込もうとするヴァンがいないという事実を前にして。
「他にも多々違いはありますが、代表的な所はそういった所になります」
「・・・その様子ではティアとガイはそれこそ役に立たないというより、余程でなければ敵に回る可能性は高いのでしょうが・・・その世界でなければならないのですか?ルークを送り、手助けをするための世界は?」
「他にも探せばあるかもしれませんが、生憎と私の時間も限られていますしルークの存在が完全に幻想郷からすらも消え去ってしまえば元も子もありません。そして修正力が働かない所を探すのは私にとっても結構な手間がかかるのですわ」
「そう考えれば贅沢は言っていられないという事ですか・・・」
紫はその違いについては以上と言いジェイドはそこ以外にないのかと聞くのだが、手間がかかる上にルークの存在自体が危うくなると言われて仕方無いというように漏らす。ルークを手助けすることに満更ではないが、少しは楽もしたいというのを諦めるように。









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