道のりは険しく時間は限られている

「・・・そこについては気にしないでください。どうしても気になるというのであれば道中でお話ししますので先を急ぎましょう」
「え・・・は、はい・・・」
だがそこにジェイドが面倒そうながらも反対を許さないといった空気を滲ませ後でと言ったことに、ナタリアは戸惑いながら頷くしか出来ずにティアも何か呆然とした表情を浮かべるに留まった。
(今のはここでごちゃごちゃとなるのを有無を言わさず止めたんだろうな・・・ここでティアとナタリアの話が長引いてもあまりいいことなんてないどころか、面倒な流れになりかねなかった可能性が高かっただろうし)
(『あ~、なんでちゃんと戦おうとしないのかと私はちゃんと動いていたの水掛け論になるだろうって感じか』)
ルークはそんなジェイドの行動の訳を推測し、『ルーク』もまた納得する。二人が面倒な流れを作るのを力技だが止めたのだと。






・・・そうして一触即発になる事態を避けたルーク達だが、廃工場の出口辺りから見えた光景に一同は立ち止まる。
「・・・どうする?タルタロスが見えるけど、その近くにイオン達も見えるぞ・・・」
「どうやらイオン様を連れていく最中のようですが・・・ここで彼らと戦ってでもイオン様を取り返すなんて事はあまり望ましくはありませんね」
「どうしてですか、大佐ぁ!?」
「彼らが我々を迎撃に来ればあちらもそれなりの数の兵を伴わせた六神将が来るでしょうし、あちらが撤退をするのであればタルタロス相手ではまず人の足で追い付けません。そればかりか我々が歩きでケセドニアに向かっているとあちらが知ったなら、どのような事を仕向けてくるか・・・とてもではありませんが、諸々の危険を考えれば彼らに存在を認知される事は望ましくはありませんよ」
「・・・そんなぁ・・・」
・・・雨の降る中で遠くに見えるタルタロスと近くにいる神託の盾達の存在にルークがどうするといったような声を上げ、ジェイドが関わらない方がいいと理由もつけて述べるとアニスは脱力感に満ちた声を漏らす・・・ちなみに今回ルークがアッシュに突っ込まなかったのはジェイドがあそこにタルタロスがあるから様子を見ようと、ルークに強い視線を向けてきてその意図をルークも理解したからだ。下手にここで接点を作るべきではないという意図を。
「まだるっこいですわ!我々だけで戦うのが無理だと言うなら、導師を取り返すだけ取り返して城まで逃げればよろしいではありませんか!」
「そのようにしたら神託の盾が見境なくバチカルの住民がいるかどうかも構わず襲ってくる危険性もそうですが、貴女が見付かって城に連れ戻されるという結末になる可能性も出てきますよ」
「っ!」
ただナタリアは構わず助けに行くべきと言い出したのだが、すぐさまのジェイドの返しに言葉を詰まらせる。人々の安全もあるだろうが、明らかに城に戻らされる可能性についてを嫌だからこそといった様子で。
「と言うわけですので、少しの間こちらで待機しておきましょう。多少時間はかかるでしょうがイオン様をさらった以上は神託の盾もあそこに長居はしないでしょうし、雨も長くは降らないと言ったように聞きましたからね」
「・・・でもそれだとイオン様がぁ・・・」
「一先ずはここを切り抜けてからにしてください。いくら彼らでもイオン様の命を奪うような事はしないでしょうし、生きていればチャンスは巡ってきます。ここで無闇に行動するよりはマシだと割り切ってください、アニス」
「・・・はい、大佐・・・」
そうしてしばらく待とうと言ったジェイドにアニスはどうにか出来ないかと言うが、今はどうしようもないと説明つきで言われて力なく頷くしかなかった。無理なことは出来ないと理解して。









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