焔の存在を幻想にさせぬ為に

「・・・時の修正力と言うのが相当に厄介だと言うのは分かった。だが肝心な事を聞いていない・・・何故俺達がルークの体を得ることに協力しなければならないのかということだ。協力に関してはまだいいが、ルークの体を得たいだけなら極端な話として適当な時期の体を拝借すればそれで済むだけの話だろう」
「確かにそうですね・・・」
ただそこでアッシュが何故協力が必要なのかと問うと、ジェイドも納得の様子を浮かべる。何で手間隙をそうかける必要があるのかと。
「その理由は二つ・・・まず一つはルークがその体を得るだけ得てそのまま幻想郷に帰るのは気が引けると言ったからです。このオールドラント同様その平行世界のオールドラントも預言に詠まれた滅びがある世界ですから、それをせめて回避させてから幻想郷に戻りたいと」
「成程・・・その手伝いの為に我々に協力してほしいというわけですか」
「一度やったことだから難しいことではないどころか、簡単に行くと思っていますわね?ですがそう簡単ではないからこそ、貴殿方に協力をお願いしに来たのですわ」
「・・・つまり二つ目の理由が関連しているということですか。我々に協力をしてほしいというのには」
紫はそんな問いに対して手を出して二つ指を立てて一つ目の理由を挙げるとルークらしいといったようにジェイドは納得するが、いかにも難関が待ち構えているといったように思わせ振りな言葉を口にした紫に表情を引き締める。
「なら何だ、その理由とは?」
「ではお答えしますが、二つ目の理由は何かと言えばそのオールドラントでのヴァン謡将の影響が悪い方で出ているのです」
「・・・は?」
「その程度なのかとか、訳が分からないといった様子ですが・・・謡将の行動がいかに貴殿方やこのオールドラントに影響を与えたのか、ということに関しては貴殿方の方がよくご存じの筈ですしその性格も理解されている筈ですが・・・平行世界と言うのは貴殿方の思うような、何一つ違いのない全て瓜二つのままの世界などではありません。むしろ平行世界であるからこそ違いが出るのですわ」
「っ、なら何だ?そのヴァンの悪い影響とは?」
アッシュがその二つ目の理由を早く聞かせるように声をかけるのだが、紫は答えを言いつつもそれに要領を得ないといった様子に平行世界の違いについてを更に追加すると焦れたような声を漏らす。
「今の貴方なら理解出来ますでしょう?ヴァン謡将はアクゼリュスでルークの事を操るまでは師としての顔を崩さず、あくまでも厳しくも優しい師匠という顔をしていたことは。ですがその平行世界のヴァン謡将はそういったルークへの師匠として信頼を植え付けるようなことなどほとんどせず、事務的な対応しかしていません」
「何・・・?」
「これが何を指し示すのかと言えば、それは自分の気に入った相手なら惜しみ無く愛情を注ぎ込みはするものの、それ以外の相手には事務的な態度ならまだいい方で普通に見下したような態度を取るという事です・・・これに関してまたその程度かと思われるかもしれませんのであらかじめ言わせていただきますが、謡将がそのような事になっているためにその平行世界のオールドラントはこちらと違い滅びを避けられない世界になっているのです。主にアッシュとガイとティアが終始ヴァン謡将寄りの考えになってしまっていて、残りの貴殿方の面々も仲が良かったなどと到底言えぬ状態であることからヴァン謡将達に一丸となって立ち向かう事が出来ず、精々謡将達を倒せても良くて相討ち止まり・・・そして結果としては謡将達の手か預言通りの滅びになるかのどちらかの未来しかその平行世界のオールドラントでは訪れていません」
「「っ!?」」
・・・だが紫が返したヴァンの影響が及ぼす結果の有り様に、アッシュだけでなくジェイドまで目を見開き絶句してしまった。パッと聞いただけでも半数を占める三人がヴァンの方に気持ちが寄っていて、その他も仲間が仲間と呼べるような状態ではないのだと少し聞いただけでも理解してしまったが為に。









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