焔の存在を幻想にさせぬ為に

「ならどうやってルークの肉体を得るのかと言えば、手段だけ言うなら私の能力を持って貴殿方とルークに平行世界の過去の貴殿方と同化してもらうというものですわ」
「何・・・平行世界の自分?」
「貴女・・・それは本気で言っていると言うか、そんなことが本当に出来るのですか?」
「えぇ、私の能力なら可能ですわ」
それで紫が具体的な方法は平行世界の同一人物との同化と言い、アッシュはスケールの違う言葉にキョトンとしかけるがジェイドが強い疑問の視線と言葉を向ける様子に気を悪くした様子もない笑顔を紫は浮かべる。
「私の能力は境界を操る程度の能力・・・程度のと言うのは幻想郷における能力の呼び方なのでその程度なのかと言うようなニュアンスで捉えると痛い目を見ることになりますが、その境界を操る程度の能力により私は様々な世界・・・それこそ平行世界への来訪なども可能にしていますし、このオールドラントのように幻想郷から遠い遠い異世界にまでも来ることが出来ますの。そして私の能力を用いれば貴殿方の魂と肉体の境界を弄り、全く外傷もないままに貴殿方を殺す事が出来ますわ」
「っ・・・殺すとは物騒ですが、その能力があるからこそ貴女はここに来られたし平行世界の我々と同化させることが出来ると言う自信があるのでしょう。ですが何故平行世界の過去などというやけにややこしく面倒な所に送るのですか?時間の境界すら操作することが出来ると言うなら、この世界の過去にでも戻せば手っ取り早いではありませんか」
「私の能力を理解いただいた上での貴方の疑問はごもっともですわ。確かに平行世界をわざわざ探すのにも手間がかかりますもの・・・ですがそう簡単ではないのです。時間に関係する能力者に何らかの資格があるならまだどうにかなるのですが、時の修正力に関しては私の能力でも難しいと言わざるを得ません」
「時の修正力、ですか・・・」
紫はそこから自身の能力についてを説明していきジェイドは納得しつつもその手段についてを疑問視するが、時の修正力と返ってきた事に眉を寄せる。
「この時の修正力というものは厄介な物ですわ・・・迂闊に弄ればそのしっぺ返しを受ける羽目になります。現に幻想入りした住民の中にある特殊な事例の人物達がいたのですが、その人物に仲間達は時に関する事柄に大いに関わり歴史を多大に変えていきました。ただその幻想入りした方々の事情を知った上で幻想郷に入っていないかつての仲間達の行方を私が調べたところ、そのかつての仲間達は時の流れによる修正力とでも言える力によって断罪を受けていました。時の流れを乱したことによってです」
「そんなことが・・・」
「幻想郷は全てを受け入れる、それはそれは残酷なもの・・・私は幻想郷についてをこのように言葉にしたこともありますが、時の流れというものもまたとても残酷なものですわ。そしてその時の流れの修正力という物は気まぐれというか、世界によっては働く所と働かない所があります。私はこのオールドラントがそういった修正力が働く所かどうかを調べますと、そうであることが判明しました」
「・・・確かにそれは脅威であると言えるでしょうが、貴女ならその影響を能力で避けることは出来るのではないのですか?」
「時の修正力は多少誤魔化した所でどうにかなるような甘いものではありませんわ。例え私の能力をフルに活用した所で修正力の目から逃れることは出来ません。そしてその時にどうにか抵抗しようとしたとしても、妖怪としての力はあれどもあくまで私は一介の生命体でしかなく修正力に抵抗出来るような力まではありません。その様は例えるなら大地全てを飲み込まんばかりの大津波に対し、泳げるのが自慢ならあの波を相手に泳いでみろと何も持たされずに砂浜に立たされるような物ですわ」
「・・・確かにそんな大津波相手に抵抗など出来るはずもありませんし、その例え通りなら貴女でも時の修正力にはただ津波に押し流されるだけで抵抗など何も出来ないということですか」
「えぇ。そうなれば私の命そのものだけで済むならまだしも、幻想郷そのものすらもが私の存在が無くなることで存在すらしなくなることも有り得ますわ。ですから慎重に慎重を重ね、時の修正力が働かずに貴殿方を送っても問題のない平行世界を見付けましたのよ」
「そういうことなのですか・・・」
それで時の修正力がどれほどに厄介な物かを説明した上で自分がいかに考えて動いてきたのか・・・紫が語るその話の中身に、ジェイドもその言葉を真剣に受け止める。これまでの話の中身からして、決して紫が嘘をついているわけでは無いということを感じたために。









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