移ろう気持ちに関係

「まぁそういったことからティアはダアトの中で微妙な立ち位置にいたんですよ。確かに謡将を倒した英雄ではあったのですが、そういった人を導く才能がない事からどのようにすればいいかとなり宙ぶらりんと言うか、立場的に高い地位にはいても人をまとめる役職に仕事は回されてはいなかったそうですから」
「・・・それは本人は気付いてはいなかったのか?」
「流石に全く気付いていなかった訳ではないとは思いますし、彼女自身も力不足であることを認めたくないというような風な姿を見せていたとアニスから聞いています・・・ただこちらのティアに関しては、もし同じ立場に立ったとしたなら自分の力不足などではなく周りがおかしいんだと非を認めようとしない形で周りのせいにするでしょうね」
「・・・そうなる姿は確かに目に浮かぶよ・・・」
そんな元々のティアの状態についてを話をした後こちらのティアが同じような立場になった場合を仮定するジェイドに、ルークも否定を返すことが出来ずに苦い表情を浮かべるしかなかった。決して自分の失敗に間違いを認めようとはしないだろうと自身も思い。
「・・・これはどちらのティアにも言えることですが、彼女は結局は私心に自分を殺すことが出来ていないんですよ。その上で自身を理解しておらず、自分はこれでいいのだと思ってしまっている。自分が今までこれでいいと考え、行動してきたことによりです・・・しかし自分のやりたいことが誰にとっても全て正しいなどという理屈が通用するほど世の中は甘くありませんし、そこで周りとどうすり合わせをして行動するかが社会というものの中で行動する基本になります。その点ではこちらの彼女に限って言うだけでも、社会に適合しようとも適合したいとも考えているとは思えないどころか自分の気持ちが周りにとっても正しい答えだ・・・と大げさではなく彼女は考えているでしょうね」
「・・・だからジェイドは使われてこそ力を発揮出来るタイプだって言ったのか・・・」
「えぇ。やる気のある無能とやる気のない無能はどちらが害悪かという比較をした時、やる気のある無能が被害をより大きくもたらすという話がありますが、馬鹿とハサミは使いようという言葉もまた存在します・・・彼女が指揮を取って戦う軍は恐れるに足りませんが、彼女の譜歌を十全に用いられて戦う軍は驚異になるでしょう。ただその点であのティアは言うことをハイハイと素直に全て聞いてくれるとも思えませんし、何より自分の安心が確保出来ていないと文句を平気でぶつけるばかりか、下手に攻撃対象として狙われたら何も抵抗出来ないままに死ぬことも十分に有り得るでしょう。そんなティアを兵士として、上の立場の人間として配置するなど私だったら絶対に御免です」
「・・・そこまでハッキリ言い切るくらい、本当に酷いんだな・・・」
その上でそんなティアについてを散々言った上でキッパリと関わることを拒否をしたいと言い切るジェイドに、またルークは脱力感を感じざるを得なかった。それだけの判断をされても仕方無いのだと今のティアの姿から感じた為に。
「・・・まぁ元の方のティアもこちらの方ほどではないとは言え人の上に立てる程の器は無かったのは確かですが、今となってこちらの方の姿を見て改めて感じたことですし、おそらくアドバイスをしても彼女は意固地になって自分のやり方を変えられなかったと思いますよ。自分は自分だとね」
「あ~・・・確かにそうなるだろうな~・・・」
そう言った上で元のティアについても言及するジェイドに、またルークも納得してしまった。元のティアも頑固で、人の意見を簡単に聞き入れるようなタイプではないと。









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