女忍、舵取りに苦労する

「・・・あの、すみません・・・今の話、ナタリア様を連れていくと選択をしたというなら丞相にモース様からお叱りを受けると言うのは、本当にそうなる可能性は高いのでしょうか・・・?」
「百歩譲って旦那様はまだ融通をきかせてくれたとしても、モース様が許してくれる可能性はほぼ無いと思うよ。特にティアに関しては心象が滅茶苦茶下がってる状態だから、まず間違いなく罪に問われるのは確実で慈悲を願っても無駄にしかならないだろうし」
「「っ・・・!」」
そんな空気の中でおずおずとティアがくのいちに確認を向けてきた為、モースに慈悲はないと視線を向けて口調を崩しながらも断定するように告げるとナタリア共々表情を青くする・・・前者は罰を受けることが確定になることを想像し、後者は実際に犠牲になる存在が目の前にいることを改めて確認した為に。
「さて・・・散々話をしましたが、今私が話した中身が確かな物になるという保証はありません。ですが貴女を連れていくとなれば貴女が半ば強引に付いてきたと弁護しようとしても、私達が罰を与えられる可能性は相当に高いです。マルクトの代表であるピオニー陛下が寛容であったり慈悲深い方なら大佐は問題ないかもしれませんが、少なくとも大詠師はそこまで甘くない方であることはナタリア様も少なからず対峙されたこともありご存知の筈です」
「そっ、それは・・・」
そのまま視線に口調を戻して続け様にモースの性格は知っているはずと強調するくのいちに、ナタリアは否定を返せずに口ごもる。ナタリア自身、モースに対して感じた印象からけしてそんな寛容な人物ではないと思っていたと分かる様子で。
「・・・本来でしたらこのような話をするべきではないと思いましたが、ナタリア様は自身が付いてくることは利しかないと疑うことなく話をされていました。私の話はあくまで私達の視点から見た物で、キムラスカに所属しているナタリア様には本来関係無い事・・・ですが自らの行動がどのような影響を生むのか、そういった事を考えずにインゴベルト陛下の許可も得ずに付いていくと口にされるナタリア様にあえて口にさせていただきました。ルーク様を始めとして、貴女の行動がどのような影響を周りに及ぼすのかということを」
「っ!・・・そう、なのですか・・・私が付いていくとなれば、そのような迷惑を貴女方が・・・」
そして最後とくのいちが静かに行動の及ぼす影響についてを敢えて口にしたと理解してもらうように並べていき、流石にナタリアも今までの話によりシュンと萎んだように体を縮ませながらボソボソと声を漏らすしか出来ない。
「・・・まずはこのようなことを申し上げたこと、慎んでお詫びします。ですが今の話を聞いてナタリア様は自身がどのような行動を取るべきか、理解されたかと見受けます。その上でどのような選択をなさるかについては私は決定権を持ちませんが、聡明なナタリア様であればどうなさればよろしいのか理解されているはずです」
「っ・・・」
それでだめ押しとばかりに頭を下げた上で聡明ならと強調して選択を求めるくのいちに、ナタリアは言葉に詰まって視線を反らす。
(あ~・・・この様子だとかなり付いていかない方には偏ってはいるようだけど、それでも諦めきれてない感じかな~・・・どうにか私達に迷惑をかけないようにした上で付いていけないのかって考えてるんだろうけど、いい加減にしてほしいよ~・・・)
その姿をまだ同行を諦めきれてない物と見たくのいちは心底から力が抜ける想いを抱く。聡明さの欠片もない様子に。









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