女忍、舵取りに苦労する

「とにかく!今はそんなことどうでもいいのです!今重要なのは貴殿方が私を連れていくと言ってくださる事ですわ!」
「・・・いや、そもそも俺達は連れていくつもりがないからくのいちの考えに乗ったんだよ。なのになんで俺達がお前を連れてかなきゃなんねぇんだっつーの・・・」
「っ、」
「そこまでにしてください、ナタリア様。ルーク様もそうですが、私達の立場から見ても付いてこられては困ると考えたからこそ私はあのような手段を取ったのです」
「・・・付いてこられては困る?何が困るというのですか、私が来るというのが!」
(うわっ、本気でこのお姫様面倒臭い・・・ここまで自分で自分の価値に行動が無条件にいい方に流れるなんて考える人そうそういないよ・・・)
そんな恥ずかしさを憤りを持って振り払い話を戻すナタリアにルークが呆れたように返し、一気に怒りを爆発させそうになった瞬間にくのいちが割って入る。だがそれで言うこととターゲットが変わったとばかりにまくし立てる姿に、また一層くのいちは内心でゲンナリとする。
「・・・私とアニスはルーク様一行とは厳密には違いますが、こうやって共にここまで来ました。和平に向かう皆さんの邪魔をしないよう、それでいて手を出せる領域にあることには手を出すという協力体制においてです。しかしナタリア様は違います。いかにキムラスカ内において地位が高かろうと・・・いえ、高いからと言ってインゴベルト陛下というキムラスカの頂点に立たれる方のお言葉に背かれて行動されているナタリア様を連れていくとなれば、ルーク様だけでなく我々もどのようなお叱りを受けるか分かりません」
「そのような心配など無用、私がお父様に言えば貴女方にお叱りの言葉など無くなりますわ!」
「インゴベルト陛下はそれでよろしいでしょう・・・ですがマルクトに所属されている大佐に、ダアト所属の我々は各々の上司にもお叱りを受ける立場にあります」
「・・・え?」
それでも言葉を糺したままで自分達の立場や危険性についてを話すくのいちにナタリアは自分が言えばと強気に返すが、それだけでは済まないと返されキョトンとした表情に変わる。
「その点で大佐の上司と言うか命令を下したのはピオニー陛下で、我々ダアト陣営の責任者とも呼べる人物は導師は別として考えると私の夫である丞相もしくは大詠師となります。今名前を出した三人は揃ってマルクトにダアトの重要人物と言っても過言ではない立場にいる方々ですが、もしこのままインゴベルト陛下が連れていくようにと命を出していないナタリア様・・・貴女の思うままに連れていくと決定させたなら、我々が批難を浴びることになるのです。何故インゴベルト陛下が反対していたことを許可したのか、キムラスカに対して反意を見せたのかと」
「はっ、反意!?」
「どうナタリア様が言葉を取り繕われても陛下のお許しをいただいていないばかりか城を脱け出してまでこちらに来た以上、ナタリア様の同行を認めたとなれば我々は陛下を始めとしたキムラスカ上層部に対して望ましい選択をしたとは到底言える事ではありません。インゴベルト陛下の意向を丸々と無視した形になりますので・・・ただだからといってならいきなり戦争だなどと極端な選択を取るほど、キムラスカも短慮ではないでしょうからそこまでの心配はないと思われます。しかし我々に対しての心象が一気に悪くなるのはどうしても避けられないでしょう、キムラスカからの心象もですが各々の上司達からの心象が下がるのは」
「そっ、それ・・・は・・・」
「そうなれば貴女がいかに自分が連れていけと言ったことだからと我々を庇おうとした所で、表向きは貴女の顔を立てて我々を許したとしても後で我々がどのようなお叱りや罰を受けることになるかは分かりません。結局貴女を連れていくと決断したのは我々・・・そう見られる事にそうしたという事実は変わりはないのですから」
「っ!!」
・・・そこまで来てしまえば後はくのいちの独壇場だった。
いかにナタリアを受け入れたなら自分達の立場が悪くなり得るか・・・どうにか言葉を返そうとしようとするが全て淀みなく、それでいてどうしようもない事態になることを強調するくのいちに最後はナタリアも絶句と共に顔を青くならざるを得なかった。自分の行動が他者を酷い目に合わせる可能性が極めて高い・・・そう知らされたが為に。













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