女忍、舵取りに苦労する

「・・・もう一回確認するけど、アッシュってディストに私達への伝言役を頼んだんだよね?それって是が非でも私達を見つけて伝えなきゃ殺す、みたいな緊張を感じる問答無用の物だった?」
「いえ、そうではありませんが・・・と言うことは、アッシュの言う通りにするつもりはないという事でいいのですか?」
「うん、行った時の方が後々の状況が悪くなるとしか思えないんだよね~・・・導師の身柄を取り返したとしてアクゼリュスに無理矢理行くための理由付けが面倒になることや、アクゼリュスの到着自体が遅くなるのは目に見えてるし。だったらまだ行かない方が後々楽だと思うからね~」
「そうですか・・・ではどうやってアクゼリュスにまで向かうつもりですか?タルタロスを追うことは流石に貴女でも無理がありますし、表向きと言えど我々の航路を割り出さねば追い掛ける事すら出来ないと思いますが・・・」
「ん~、その辺りはこっちでどうにかするよ。それまでそっちに頼む訳にもいかないしね」
「分かりました、それはそちらにお任せします」
それで一つ確認を取った後にディストが行かない方に話を進めるのかと予測すれば、くのいちは是と頷き後の事は自分でと言って納得させる。
「じゃあアクゼリュスに到着する前に何か変わった事があったらよろしくね~、ディスト」
「はい、ではまた後日お会いしましょう」
そして気楽に話を終わらせ別れを告げるくのいちにディストは挨拶を残し、タルタロスのあるであろう方角へと飛びさって行く。



・・・その後くのいちは何事もなかったかのようにオアシスに戻り、アニスにディストとの話についてを報告した。それで一通り話を終えた後にルーク達が出発することとなり、二人もまた一行と行動を共にしようと動いていく。















・・・そして砂漠を越え、辿り着いたケセドニア。
(ん~・・・あのお姫様が来るとしたらここ以外にないけど、そう易々とインゴベルト陛下が脱け出させるかどうかちょっと怪しいし五分五分かな~・・・)
街の入口にてさりげに辺りを確認しつつ、内心でくのいちは考える。ナタリアが来てるか否かについて。
(ま、来てたら来てたでで行動を取るとして今は・・・)
「じゃあ途中で話した通り、ここであっしらは情報を集めやす」
「あ、そうだったな。んじゃな」
しかしすぐに考えを切り替えてアニスの肩を抱いて共に頭を下げるくのいちに、ルークはあっさりと了承を返す。



・・・さて、くのいちが道中で何を話したかと言えば導師及び神託の盾の情報をケセドニアで集めるために分かれるという中身だ。

表向き神託の盾の後を追っていると言っている事から無条件にルーク達と共に行くのはおかしな話になる・・・故にくのいちはケセドニアの中で神託の盾達の行方を探るといった体を取るようにしつつ、その実は神託の盾はアクゼリュスに向かったという情報を得たと嘘をつくことにある。

くのいち自身、この策が本来策とも呼べぬような稚拙な策だという事は十分承知している。だがそれで騙す相手は孔明ではないし、下手に凝った策を講じるより分かりやすく単純な策を行う方が効果を得られる事もあるということも知っている・・・だからこそくのいちはシンプルに嘘をつくことにしたのだ。後々に控えている可能性もあるナタリアの事もあって長い時間をかけられないために。









・・・そうやってルーク達と分かれたくのいちだが当然まともに情報収集などする気などないため、漆黒の翼がケセドニアで拠点としてる酒場にアニスを残して一人ルーク達の様子を陰から伺っていた。









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