女忍、舵取りに苦労する

「んじゃ、ちょうど雨も降っててちょうどよく向こうの目も誤魔化せそうなんで早速行ってきま~す♪」
「ってうわっ!・・・あいつの身体能力どうなってんだよ・・・」
そしてくのいちが笑顔を浮かべながら廃工場の出口から勢いよく飛び降りるが、ルークはその光景に驚きを隠せずにいて周りの面々もアニスを除いて似たような気持ちを抱いていた。



(さってっと~、折角こんな機会が来たんだしリグレットに会っときたいな~。これから色々やらなきゃなんないんだし・・・っと、その前に神託の盾の兵士の姿にでも変化しとかないと・・・)
くのいちは地面に降り立った時の衝撃など気にした様子もなく走り出し、ボンと自分の体の周りを煙で覆わせると神託の盾の兵士と姿を変えてそのまま走る。タルタロスの方へと・・・






・・・それで雨の中他の神託の盾に見られることなくタルタロスに忍び込んだくのいちはリグレットのいる場所を乗っていた神託の盾に不自然でないように聞き、そちらの部屋に向かう。



「・・・失礼します、師団長」
「・・・何用だ?」
「固い顔をしないでよ~、私だよ私♪」
「っ、くのいち殿か・・・どうしたのですか?わざわざこのような所にまで忍び込んで来られるとは・・・」
「それについては今から説明するね~」
それで部屋に兵士としての口調で声をかけた後にくのいちが素の口調に戻すと、リグレットは固い空気から驚きを見せてそんな姿に説明を始める。



「・・・成程。現在そちらがタルタロスがいるから足止めをされているということで、こちらに来たということですか」
「それもあるけど、どうして神託の盾はここに留まってるの?ルーク達をバチカルから出さないようにするにはちょっと謡将の計画ともズレが生じるから、導師を拐ったらすぐに撤退するのがスジだと思うんだけど・・・」
「その事ですか・・・」
・・・そして説明が終わってまだこの場に留まる理由についてを聞くくのいちに、リグレットの表情が微妙そうに歪む。
「・・・確かにルーク達をバチカルから出すことに我々が速やかにこの場から離れるのは謡将の望む展開ではあります。ですがそれを、アッシュがごねて・・・」
「・・・アッシュが?なんで?」
「外にアッシュが立っていた姿は見ましたか?いつもなら魔物の討伐任務など単純な物ならともかく、こういった護衛や顔見せが必要な任務は嫌うのですが今回に限り出てきて・・・それでいて導師がこちらに来たのに、戻るのは嫌だとごねて・・・」
「それで今タルタロスは止まってるって言うか、止まらざるを得ない状態になってるって事かぁ・・・その理由に関して、他の面々も含めて検討はつかない?私は何となくこれかなって思ってるのはあるんだけど・・・」
「・・・おそらく、ルークを待っているのではないかと思われます」
「あ・・・やっぱりそう考えてるかぁ・・・」
それでその理由はアッシュであると聞いてどうしてそうしてるのかとの話になるが、ルークと予測するリグレットにくのいちも納得する。
「アッシュ自身は否定はしていますが、ルークに対するこだわりは貴女も知っているように明らかです」
「でも流石にここでルークを殺す、なんて暴挙をアッシュが起こす?一応周りにはリグレット達もいるんだし・・・」
「その事についてアッシュがカイツールの軍港を襲い、ルーク達の身柄を要求した事件は覚えていますか?・・・あそこで例え専門外の事柄があるとは言え、アッシュはその場に残らずディストに後を任せました。あれはアッシュの性格を考えればおかしな事と言わざるを得ません。そして同調フォンスロットを開けばこちらの有利になると言ってきた事や、ルークの身体データを取れるとディストを興味を引くような事でそそのかしてきた事も」
「・・・つまり、ルークを殺す以外にアッシュには何か目的があるっていうこと?」
「はい、私はそう感じています」
「むぅ~・・・そうなるとまた話が変わってくるなぁ・・・」
だがリグレットがルークを殺すことは目的ではないと根拠を語ると、くのいちは表情を難色に染める。また頭を煩わせる事が増えたと。











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