女忍、舵取りに苦労する

・・・様々な周囲の状況の変化に頭を悩ませつつも、くのいちは持ち前の明るさを持って表向きはそれを悟らせないようにしつつ動く。それで廃工場の中を進んでいき、廃工場に住んでいた蜘蛛が自分達を遥かに越える大きな魔物となった蜘蛛と相対してその魔物を退治した。



(ん~・・・こういった蜘蛛のような妖怪じみた存在が普通に日ノ本にいたら、天下取りをしようとかって考える人達も少なかったのかな~。まぁ独眼竜の旦那辺りはそんなのも含めて天下を目指すわ馬鹿め!とか言いそうだけど、多分そんなに数はいなくはなってたんじゃないかな~。少なくとも幸村様は魔物退治が私の役目だ、くらいになるだけだったろうし)
蜘蛛の死骸を前にくのいちはふと前世の事を思い出した上で考える。このオールドラントのように魔物がいた場合についてを。
(・・・まぁ魔物が相手ならまだマシかな。人と人が相手だとどっちが勝っても遺恨は発生するし、その上で魔物がいてもいなくても人は争う・・・そう考えるとね)
そのまま考えを深める内にくのいちの思考から熱が消えていく。人と人が争うことを思い。



・・・前世でもくのいちは人と人が争う光景を目の当たりにしていた。いや、規模で言うならこのオールドラントに比べれば小規模でこそあるが、国と国の戦いなどこちらとは比べるまでもなく数が多く幾多の戦場が存在していた。

そういった光景を見てきた上で魔物がいても人と人が争うという事態を、個人的にくのいちはうんざりした気持ちを抱いている。忍として腕利きで冷酷になどいくらでもなれる彼女だが、別に人殺しがしたいとか争いが好きだというような快楽主義者ではない。むしろ気質としては気の合う人物達とふざけあったり、冗談を言ったりして笑いあうような穏やかな時間を好む性格だ。

だがそういった平和な時間を求めることなく、自分達の為だけの繁栄を求める人物達が争いを起こし、そして様々な怨恨が上下の立場関係無く生まれてくる・・・そういった事を考え、くのいちの心は冷えていったのだ。特に今孔明達と共に立ち向かう相手がそれに当てはまるために。



(・・・あぁ、いけない。もう皆行こうとしてる、私も行かないと・・・)
そんな風に心が冷えていく中でも周りへの注意は怠らない・・・くのいちは先に進もうと動き出すルーク達に気付き、後に続かんと足を運ぶ。
「・・・ん?ちょいと待ってくだせぇ、皆の衆」
「皆の衆って・・・前から思ってたけど、お前その口調なんか色々混ざりすぎじゃねぇか?古かったりおちゃらけてたりよ」
「そいつはすみやせん。でも今廃工場を出るように動くのは止めた方がいいっす。遠目にタルタロスの姿があってその近くに神託の盾がいやすから今出ると見つかる恐れがあるんで」
「はぁっ?・・・マジかってのもあるけど、よく見えんな。タルタロスはともかく、その近くにいる神託の盾なんかよ・・・」
「目がいいのがあっしの取り柄の一つっす」
「そんなもんか・・・ってまずいだろ、それ・・・このまんま出てったら俺らヤバいだろ・・・!」
そんな時にふと廃工場の出口の先を見たくのいちが皆を呼び止めルークが口調についてを言うが、今は関係無いとタルタロスと神託の盾の存在を口にするとすぐにヤバいと気付いたようで焦りを口にする。
「・・・ちょいと待っててもらえやすか、皆さま方?あっしがちょっと向こうまで忍び込んでどうにかあそこを動かしてきやす」
「・・・いいのですか?貴女の目的はイオン様の救出のはずですが・・・」
「だからって導師を助けてはい後はお任せします、なんて言われたってそっちが困るだけっしょ?それに私達も導師を助けたらあの神託の盾は追ってこないなんて保証はないし~・・・だから今は導師の救出より、タルタロスをあそこから動かす方に専念させていただきやす。そこからあっしらは後を追うって事にしますんで、どうっすか?」
「・・・えぇ、こちらとしてもその方が都合がいいのでお願いします」
そこで自身が動くと言い出すくのいちにジェイドは優先順位についてを指摘するが、そちらの事も考えてといったように言うとすぐに頷く。反論する意味がないばかりか、反対した方が損な事になるといった言い方であったために。











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