女忍、苦労する

・・・それから数十分もしない内に廃工場の方から天空客車は動き出し、バチカルの街中の方へとその身をつけた。そしてそこから一人の女性が姿を現す。
「遅いですわ!まだこちらにすら来ていないのですか、ルーク達は!」
・・・その女性とは謁見の間での王女の服と違い、素材などの高級さは伺わせつつも動くに適した軽装を身にまとったナタリアである。
天空客車から降りて辺りを見渡しても目当てのルーク達がいないことに、苛立ちを隠そうともせずに大きな声を上げる。
「あの・・・ルーク様達をお探しですか?」
「・・・はい、そうですが貴女は?」
「旅の者ですが、先程ルーク様達は兵士の方に呼ばれて上の階層に向かわれました。何でも神託の盾の危険性がハッキリしない以上、隠れて向かうにせよそのまま出発するのは危険だから撤退するまで城に待機し、それで時間が経っても撤退しないようならこちらが追い返すようにするといったように伝えられて」
「そうなのですか?・・・仕方ありませんわね、そういうことでしたらお城まで戻りましょう。ありがとうございました」
そんな時にフード付きのマントに身を包んだくのいちが現れルーク達の行動と聞いた内容を説明していくと、ナタリアはすぐに納得して礼を言った後に上の階層に向かうべく歩を進める。



「・・・ご苦労様です、くのいち」
「いえいえ、こっちも必要な事でしたから」
それで少ししてナタリアがいなくなったのを見計らって現れたルーク達の中からジェイドが礼を言った事に、くのいちは笑顔で首を横に振る。
「しっかし、ホントお前の言ったようにハマったよな。ナタリア・・・誰も来ないならこっちに戻ってくるって言ったのが物の見事に当たったしよ」
「インゴベルト陛下の決定に逆らってまでナタリア様がこっちに来たことを考えると、ただ座して待つだけというのがあまり好きじゃない方なんじゃないかな~って感じたんですよね。それでちょっと待てば焦れてナタリア様はルーク様達の様子を確かめに来るって思ったっす」
「そして俺達は城に行ってるって思わせて、その上で兵士に伝言して城に戻ったナタリア様をどうにかしてもらう・・・なんというか、よく考えましたね。あんな瞬間にそんなことを」
「アハハ、別に大したことじゃないっすよ。旦那様なら私より綿密な策を瞬時に考えつくだろうし♪」
「丞相なら、ですか・・・」
ルークはそのまま感心したように漏らしてガイも同意するが、孔明を笑いながら引き合いに出すくのいちにティアは複雑そうに表情を歪める。
「ですが、良かったのですか?例え顔を合わせていないとは言え、丞相の奥方である貴女がキムラスカの王女であるナタリア殿下を騙すような真似をして?」
「まぁ確かにバレたらまずいかなとは思うけど、ここでナタリア様が付いてくる事になった方がまずいと思ったからそうしたんだしね~。だってもし説得がうまくいかずに連れていくってなったら、何故止めなかったんだって後で言われる可能性もあるだろうしさ。それはマルクトもそうだけど、ダアトもね」
「・・・まぁ考えられない可能性ではありませんね。そう思うと貴女の行動は私にとってもありがたい事と言えます」
「ま、そう気にしなくてもいいっすよ。どっちにしてもナタリア様の説得ってあの感じだと言葉じゃ無理っぽかったし、誰に責任あるとか云々以前に連れていくこと自体に問題が発生しかねなかったですもん」
「どちらにせよ問題はあったと・・・ならば少なくともそうなるよりはこちらの方が問題は無さそうですね」
そんなティアに構わずジェイドはあれでいいのかと聞くが、くのいちから聞かされた問題に関してあれで良かったと納得した。








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