女忍、苦労する

「確かにアニスの言う通り、厄介なんだよね~。多分あの王女様は一緒に行動するこっちの都合が悪くなる可能性が高いって丁寧に説明しても、自分が言い出した事だから貴方達には迷惑はかからないくらいにしか返してこないのは目に見えてるからね。だからせめて私達は反対しておくって形を取るの。もしこっちに無理矢理にでも来た場合はね」
「・・・出来れば来ないで欲しいし、来ても説得で帰ってくれればまだいいですね」
「そう願うしかないってのがね・・・」
そのままくのいちは再度ナタリアについての対応についてを話し、アニスの何とも言い難そうな声に似たような様子で返す。



・・・くのいちや彼女がかつて仕えていた上司、それに孔明も戦場でなら単独行動もやむ無しという場合はそう行動してきた。だが緊急時ならともかく戦場という場では単独行動は命取りになりかねない物であるため、そういった行動はあまり取るべきではない行動だとくのいちは認識している。

そして戦場を離れた場でもそれは同様、いやむしろ急を擁する事態でない限りは戦場以上に単独行動・・・スタンドプレーを取ることは御法度の行動と言えた。何故かと言えば、一人の短慮の結果の為に国と国の争いが起こりかねない事からである。

・・・くのいちや孔明の前世でもそうだったが、基本的に国と国のやり取りの中で臣下や部下の了承を全く取らずにトップの人間だけで事を進めることなどまずあることではない。何故なのかと言えばその選択には自分だけでなく、臣下以下の国に属する人間全ての行く末が左右されるからだ。その上で自分の考えのみを優先して自分好みな意見だけを採用する人物もいなかった訳ではないが、そう言った人物は大抵すぐに潰れていったというのが結末だった。

しかし、ナタリアはそう言った単独行動を行おうとしている。それも親が王であるからとは言え、臣下という立場にある人間がだ。いや、この場合ナタリアの親が王である立場にある事が一層事をややこしくするのだ。

ナタリアの行動をインゴベルトが擁護するとなれば臣下の事を無視した結果となるが、かといってキムラスカがナタリアを放置したまま事が進んだ場合マルクトにダアトがその存在についてを全く気にしないというのも無理な話と言える・・・ナタリアの性格からしてその場にいたのに自分が無視される、いないものとして扱われるような事などまず我慢出来るはずがない。むしろ自分が来たから事は成功したのだと信じて疑うことなく、むしろ相手方に批難の声を向ける事だろう。自分が勝手に付いてきた事もいつの間にか、インゴベルトも成功したから認めたものと勝手に解釈してそう言葉にする形でだ。

・・・この仮定ではナタリアがそのまま付いてきた場合の被害が大きいが、どちらになるにしても迷惑を被るのは間違いなくナタリア以外の面々だ。しかし周りがどう言おうと結果として成功したならいいではないか、むしろ自分は事を上手くいかせたのに何故批難されなければいけないとナタリアは言い張るだろう。そうなれば以降もナタリアが不満を抱いた時は自分で勝手に動けばいいと考えることになるのは目に見えている・・・実際はナタリアの思うような展開になることはないとくのいちは考えているのだが、それでもそこから先の展開で似たようなことが起きる可能性は無くはないのだ。そうなることは是非くのいちは避けたかった・・・孔明の策の事もある為に。










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