女忍、苦労する

・・・それで部屋を抜け出た後に謁見の間に入り込んだくのいちは徐々に集まり行く人の行方を観察していき、最後に部屋に入ってきたルークにティアとモース達の姿を確認してインゴベルトが和平について話を進めていく様子を観察する。









(ん~・・・分かっちゃいたけど、この流れはあんまり気持ちいい物じゃないな~。っていうか不自然極まりないことを言ってるのに、それが全く触れられないのもどうかって思うし・・・まぁあの大詠師様の事だから、あの第六譜石に関しては予防程度に持ってきた物をこれこそユリアが私に授けた一発逆転の策だくらいに考えてやったんだろうけどね~)
それである程度話が進んだのを見ながら、くのいちは気楽そうな口調で思考を深める。先程のやり取りについてを。



・・・ついさっき、ルークに対してインゴベルトにモースはまとめるとこういった事を言ってきた。『このユリアが詠んだ譜石には聖なる焔の光が炭鉱の街に行けば繁栄が手に入る、だからマルクトとの和平の為にも炭鉱の街にアクゼリュスまで行くように』、と。

その上でジェイド達がこのバチカルにまで来たのはアクゼリュスで障気という毒が発生し、マルクト側からの援助が出来ないということからキムラスカに和平の嘆願と共にキムラスカ側からの救助を願い出る為との事・・・そこから譜石の事を持ち出しこれは預言に詠まれた事だからルークはアクゼリュスに行かねばならないと言ったのだが、まず前提がおかしい行動を取っている人間が何人もいる。それはキムラスカ側の人間と、モースである。

特にモースだが孔明達が昨日謁見の間に来た時にはマルクトに戦争の意志があると言っていたのに、今日になれば一気にマルクトとの和平に賛同だと言わんばかりの意見の翻し方なのだ。これは端から見ればモースは何を考えているのかといぶかしんで当然の行為と言える。

そしてキムラスカもそういった事をモースがしているのに、全く気にも留めないばかりかこの場で話にその事を出さないのもおかしいと言わざるを得ない。この場にはマルクトの代表としてバチカルにまで来たジェイドがいて、その戦争をしようとしているというくだりを聞いているのだ。もしモースから何かを聞いているのだとしたなら、モース共々どういうことになったのかと事の経緯くらい説明するのが常道と言える。

・・・こう言った不自然な両者の行動。本来ならジェイドが抗議であったり何かしら言うべき立場にあるのだが、立場を気にしてか自分の役目ではないと考えてか・・・まぁジェイドなら後者の意味合いが強いだろう。下手に何か文句を言ったとしてもそれで和平やアクゼリュスの救助に弊害が出ては面倒と、ジェイドならそういった考えもあるだろうが。



(まぁそれで色々文句言ったりなんか言ったとしても、結果的にルーク達をアクゼリュスに行かせることはどうあっても確定してただろうけどね~。それだけキムラスカっていうか、モースを始めとした預言保守派にとってはこの預言は何より重要な物なんだし)
色々な事を考えはしつつ結局それらを実行に移したとしても、くのいちは結果として今の状況に移行するという結果に変わりはないという結論に行き着く。重要さからどうあってもとモース達はアクゼリュス行きを厳命しただろうと。
「お父様、やはり私も一緒に・・・」
「それはならぬと何度も言ったはず!」
(お?あれは、ナタリア様ですか?)
そんな時にインゴベルトの横に座っていたナタリアからの声に、ふとくのいちはいたのかとばかりの気持ちを抱く。











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