女忍、苦労する

「そうだ。だからこそもし本当にアクゼリュスに第七譜石があると言うなら、是が非でもダアトが確保しなければならないのだ。余計な争いの回避の為にな」
「それで、私がその大任を任せられることになったと・・・」
「そういうことだ・・・そして第七譜石を無事に確保出来たのなら、晴れてお前はファブレで起こした一連の事件について無罪放免となるわけだが・・・くれぐれもこの事に関して、誰かに聞かれるような事は避けよ。理由は今言ったように余計な争いを引き起こさぬ為だ。出来るな?」
「・・・はい、慎んでその命を承ります!」
(あ~、やる気をみなぎらせてるのはいいんだけど・・・この様子じゃ全く考えてもないし、気付いてもないよね。自分の罪は勝手に無くなった物だと思い込んでるようなこと言ってるけど、アクゼリュスで第七譜石が見つからなかったら許すつもりはないって言ってることに・・・)
それで話を続けていくモースにティアは一気に使命感を燃やしたよう、力を込めて返事を返す。だがくのいちはそのティアの様子を自身に都合よく解釈しているだけの物と見ていた。



・・・そう、モースは決してアクゼリュスに行けばそれでやったことが霧散して消えると言ってはいない。あくまで第七譜石を見つければ、と言っただけだ。

ただそれでもし万が一第七譜石が見付かりティアが持ってきたとしても、モースが本当にティアを許す可能性は恐らくないだろう。ティアの行動は突飛な物でいつまたどこかでヴァンに襲い掛かるか分からない、その事を危惧するモースがティアを重用どころか普通に使うとはとても思いにくい・・・精々よくて罪に問われずとも兵士を辞めさせられるが関の山と言った所だろう。もし次に行動を起こした場合を考え、神託の盾にダアトと関係無いとするために。

そして何よりくのいちはもう孔明より聞いている。モースは既にティアを見捨てるつもりでいると言うことを・・・そんな状況でティアなどより余程の信頼を置いている孔明にあえて嘘をつき、モースが助け船を出す道理などあるはずがない。
また、更に言うならそれを知らずとも国際問題と言うには十分過ぎる事を仕出かした人物に対し、ダアトの行く末を左右しかねない重要任務を任せることの方が有り得ないのだ。それをティアは何を勘違いしてか、自分の汚名を返上することにではなく自分に期待がかかっていると感じてしまっている・・・ここまで来てしまえば、ティアが何も考えてもいないのと同様と言えた。



(・・・本当に救えないね、この娘・・・もし真実が明らかになったとしても、私に旦那様どころか大詠師様の言葉なんか受け入れられないだろうな・・・別にもうそこは私達に関係無い事って言いたいんだけど、これから一緒に同行する事を考えると面倒なんだよなぁ・・・)
それでくのいちは珍しくも心底から嫌だという考えと視線をティアに向ける。聞き分けのない相手と行かねばならぬという事実を改めて前にして。
「ならいい・・・ではそろそろ謁見の間の辺りに行くぞ。時間としてもいい頃合いになるだろうから近くで待っていればすぐに呼び出しに応じれるだろうからな」
「はい、モース様」
(おっと、そういうことならここから早く離れて謁見の間に潜んでおきますか♪)
だが目の前でモースが部屋を出ると言い出したことに即座にくのいちは気持ちを切り替え、自身も部屋を後にする。









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