女忍、苦労する

「まぁそういうわけだから、しばらくアニスは適当に待機しといてね。ルーク達が出発するには一回城に集められてからになるだろうけど、それまで多少時間がかかるだろうからやることもないだろうし」
「それはいいですけど・・・話によるとモースがティアをルーク達に付けようとしてるってことですけど、色々面倒になりませんか?主にお父さんがわざわざダアトから出てルークの行方を探しに来て、ティアを罪人確定みたいな状況で連行した事を考えるとすんなり行くと思えないんですが・・・」
「あ~、そこは色々面倒にはなるとは思うけど一緒に行くこと自体に問題は出ないと思うよ。あの娘典型的な意味で自分が偉いと思うような人物に対して弱くなるから、旦那様の奥さんの私に文句をぶつけてくるとは思えないしイオンが拐われたってなって同行をするだけなら反対は出来なくなると思うし」
「だからティアは私達の同行を拒否出来ない、と・・・」
「そういうこと♪」
くのいちがそこからしばらく待機をするように言うとアニスはティアの事を持ち出し、眉を困ったように寄せるが取りあえずは大丈夫と不安を晴らすように根拠と共に笑顔を浮かべるくのいちにまだ表情は晴れない。
「それならいいかもって思った気持ちはあるんですけど、いざ事実を知ったらティアはどういった行動を取ると思いますか?・・・ティアの性格に考え方を踏まえると、不満を口にする事以上にそんなことになるはずがないって事実を否定して面倒な事になるのが何となく目に浮かぶんですけど・・・」
「まぁあの娘の事だからそうなるのは確かかな~・・・でもね、アニス。あの娘が少しでも思い直すならともかく、そうしないんなら別に気にかける必要はないからね。だってそんな私情だけで動くような兵士を旦那様が神託の盾として重用することはおろか、一端の兵卒として置くことはなくなるんだから」
「あぁ・・・そこから先はもうティアがどうこう言っても関係無いって事ですか」
「まぁね~。それともアニスは何かあの娘の事が惜しいと思える何かがあるの?」
「う~ん、ティアに関して想うことがないというより・・・ティアの事を見てると、本当の両親の事を思い出すんです・・・」
「あ・・・そっちかぁ・・・」
それでもとティアの事に聞くアニスにくのいちは情けをかける必要はないと明るく言いつつも実質見捨てる気は満々と言うのだが、やたら気にかけるその様子をいぶかしみつつ問いを向けると重そうに本当の両親という単語が出てきた事に、珍しく気まずげに後頭部に手をやる。
「・・・この2年間、二人にはお世話になってきました。その事に関して本当に私は感謝してます・・・けどこの2年間、たまに会ったり見かけたりする二人の様子は以前と全く変わりない様子でした・・・それこそ全く、自分達のやっていることに疑いなんか持つ様子も見せず・・・」
「・・・アニスに嘘をついても仕方無いから言うけど、借金の額は減ることはない所かむしろ増えていく一方だしね・・・もう一般家庭が一生かけても返せるような額はとっくに超えてるんだけど、全くその事考えてないし・・・」
「でもあの二人は人の役に立ててるからいいって、全く表情を苦しそうにする事もない・・・そう言った所がティアに繋がると思ったんです。自分が間違ってる事をしてるって思わない所が・・・」
「・・・そうじゃないって言えないのが辛いなぁ・・・」
アニスは改まって礼を言いつつも両親とティアの似ている部分についてを言い、くのいちは気まずげになりながらも否定出来ずにいた。流石に義理とは言え娘の肉親をおおっぴらに批判できる程、厚顔無恥ではないために。











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