未来と過去に繋がる後悔

「・・・本当に今までありがとうございました、くのいち。貴女のおかげでかなり私も色々と助けられてきました。貴女がいなければ私は今ほどに満ち足りた気持ちには至っていなかったでしょう・・・貴女と出会えてよかったと、心から思えます」
「それは私もですよ、旦那様・・・多分旦那様は一人ででも動くだけの気持ちはあっただろうとは思いますけど、私ってこんなんだけど旦那様がいなかったらどう自分が生きていけばいいか分からないまま生きてたと思いますから・・・」
そうして孔明が礼を述べていくのだが、くのいちもまた自分もと返して頭を孔明の体に寄せる・・・忍という立場上使われる事に慣れていて幸村という主に仕える事を本心から嬉しがっていたくのいちだが、実は生まれ変わってオールドラントにいると自覚してからは孔明という生きていく指標が無かったならこんな風に動けていたかどうか以前に、何のやる気も出ずに無気力になっていたんじゃないかと。
「・・・月英の事を口にするのは本来は良くないとは思いますが、彼女にこちらで会えなかったのは残念ではありました。ですが貴女と共に歩めたこの生に私は十分に満足しています・・・貴女に出会えて妻と出来たことは当時は打算なり何なりとあったのは分かっていますが、今なら掛け値抜きに良かったと私は思ってますよ」
「それは私もですよ、旦那様。こうして忍としてもそうだけど、人として旦那様と歩めた生は私にとって本当に良かったものでした」
更に二人は確かめあうように、穏やかな表情を浮かべあいながら気持ちを口にしあう・・・前世の縁も大事ではあったが、今生で結ばれた互いの縁に悔いはないと・・・










・・・そうして半月後。孔明とくのいちは二人揃って丞相にあてがわれた部屋のベッドにて、横並びで幸せそうに眠るように亡くなっている姿が発見された。

それで導師イオンが喪主となる形で葬儀は済み、丞相夫妻の死がダアトの人々の間に広まり・・・数年後には孔明の再来と呼ばれるようになった司馬懿と、その妻として稲姫がその地位について大いにその能力を発揮していった。ダアトがダアトとして、その上で下手に戦争にならないようにであったりするために動く形でだ。

そんな司馬懿の登場によりオールドラントの平和はまたしばらく続いていった。ただそれでもやはりその司馬懿が亡くなればまた世界に危険が訪れることもあるだろうが、司馬懿達はせめて自身の目の黒いうちはそうならないようにと動いていった・・・司馬懿は決して認める事はないだろうが、今となっては亡き友の為にと・・・









END









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