未来と過去に繋がる後悔

「その点で旦那様はもう司馬懿さんとはちゃんと折り合いはつけてるのはお聞きしましたけど、実際の所は司馬懿さんにどんな印象を抱いてるんですか?うまくいかせてくれるだろうとかそんな感じなのは分かりますけど、敵味方に分かれる感じじゃなくなった今としては」
「そうですね・・・本人に言えば虫酸が走るなどと言われそうではありますが、私としては水鏡先生と時間を共にした方々と比べても遜色ない気持ちを抱いていますよ」
「あれま。そこまでですか」
「えぇ。と言っても今のこの状況だからこそ言えるものではありますが、それでも私は彼を友だと思っています。信頼の出来る友だと」
それで今度はそちらの番だとくのいちが孔明に問い返すのだが、そこで満足そうに友という言葉が出てきたことに軽くではあるが意外そうに目を瞬かせていた。
「・・・思えば私は前世では一人で抱え込みすぎていました。自分がやらなくては蜀や殿の大望を果たせない、人材が小粒になりつつあるこの状態では時間をかければ魏は着々と力を増していく、だから尚更私が生きている内に魏を倒さなければならないと・・・ですがそういった独り善がりの行動が却って蜀の衰退を早めていたのだと、今なら理解出来ています。確かに魏は強大ではあった上で自分には時間がないと理解はしてはいましたが、それでもその後の世代に委ねる事も考えて動くべきだったのだと。ただそうした所で結果は変わっていたかどうかは分かりませんが、それでも自分がやることを考えて意固地になるよりは貴女の話から聞いたような状態を少しは避けられたのではないかと思います」
「まぁあの時うまくやってればとか、意地になりすぎなかったらこんなことにはならなかったとかって事はよくありますからね本当に」
「えぇ。ですからこそ私はこのオールドラントでは策を練り動きはするものの、皆を頼るように動いていきました。自らの力だけでやれることに限りはありますし、自分だけでやり過ぎることがないようにと・・・ただそうして動いてきて頼れる方々と共にいたというようには思いましたし皆のおかげで今後もうまくいくだろうと思っていましたが、友として対等に私に何かを言ってくれる人物を作ることが出来ていなかったと思ったのです。無論私の立場の事もありますが、そういった存在がいたならまた変わった事になったのではないかと今なら思います」
「でも旦那様も私達も駆け抜けてきた結果がこれなんですよ?」
「えぇ、結果は十二分に満足がいくものでしたしそこに異を唱える事は致しません。ただ今の友と思える司馬懿殿にならばこそ、私は想いを託したのです。後をよろしくお願いしたいと」
「・・・成程、そう言うことですか・・・」
・・・いかに孔明が様々に考えて動き、どのような気持ちを抱いてきたのか。そしてその中に後悔もそうだが、満ち足りた想いがあるのか。
それらを話して受け止めたくのいちも深く頷くのだが、その肩に孔明はそっと手を回して自分の元に引き寄せる。
「だ、旦那様・・・?」
「すみません。ですがこうして貴女と話せるのも、触れ合うことが出来るのも後少しといった所です。なので少々気恥ずかしいかとは思いますが、少しの間我慢をお願いします」
「・・・はい」
その行為に思わず動揺し顔を赤らめるくのいちだが、真剣な口調で聞いてほしいといったように口にする孔明に動揺から覚めて真面目に頷く。









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