未来と過去に繋がる後悔

「・・・昔の私が今の私の姿に発言を聞いたなら何を血迷ったことをと言うであろう。しかし先程の話で私はもう諸葛亮に対して思うところは無くなった訳ではない。言い方、と言うよりは認識の仕方が変わったのだ」
「認識、ですか・・・」
「あぁ・・・奴が敵ではないただの人間として、それもそれなりに敬意を持っていた相手だと認識出来たことでな。そんな相手の願いを聞いて無下に出来るほど私は薄情ではないつもりだ・・・それに世界を存続させたいという諸葛亮の気持ちも分かるからな」
「・・・確かにそうですね。私も彼女のこちらで歩んできた生涯についてを聞き、放っておけないと思いましたから」
そんな風に見られた司馬懿は別に気にしたこともないと話を進めていき、稲姫もまたその中身に神妙に同意する。二人の気持ちを見るだけにはしたくないというよう。
「・・・ならそちらに頼みたいことがある。嫌なら嫌だと拒否してくれても構わん」
「何でしょうか?私に出来ることがあれば協力は惜しまないですが・・・」
「何、簡単なことよ・・・こちらでの私の伴侶となってほしい」
「なっ!?ななな、いきなり何を言っているんですか司馬懿様!?」
だが続いて口にされた頼みに今まで真剣に話を聞いていた稲姫は瞬時に顔を赤くし、動揺のままにどういうことかと聞いた。何故いきなり結婚などという話になるのかと。
「落ち着け、何も私と肉体的な契りまで交わせとは言わん。簡単に言うなら今の諸葛亮達のような関係を結んでほしいということだ」
「あ・・・そ、そういうことだったんですね・・・」
「あぁ・・・諸葛亮がそう判断したのは預言により適当な相手をあてがわれないようにとのことだと言っていたが、これから私がダアトの上に行くにあたりどうしても伴侶については避けては通れなくなる。そのように上に立つ者が伴侶の一人もいないとなれば、周りはならとこぞって婚姻関係を結ばせることに執着してくる事からな」
「それは私も少なからずは分かります・・・権力を持たれる方に様々な思惑から相手をあてがうようなことを考える人達はいますから・・・」
司馬懿はその様子にすぐさま体の関係を求めはしないと説明し、稲姫も落ち着きを取り戻しつつ少し苦そうに理解出来ると漏らす・・・後になれば強い絆は出来たが元々の稲姫も自身や相手の意志だけで結婚したわけではなく、周りにも側室扱いの立場に行かされた者を知っているために。
「だから私としては春華がいたなら春華に頼みたかった所だが、このオールドラントという地で再び都合よく巡り会うといったことなど出来なかったのもあって奴はあちらの女と結婚という形にしたのだろう。だからやり方を踏襲することになるようだが、今の私からしてそうしてくれるような相手はそちらしかいないからこう言わせてもらっている。ただ子どもを作るといったことが無くても構わないという条件を飲めるなら、であるがな」
「・・・分かりました。未熟な身でどこまで司馬懿さまのお役に立てるかは分かりませんが、お受けいたしましょう」
「・・・良いのか?考える時間もほとんどなく即決したようだが・・・」
「確かに私も前には夫がいましたし、気持ちはあの人と共にありたいと思っています・・・ですがこのような事になりそのような都合の良いことなど望めないだろうというのもですが、何より私も二人の後を継いでこの世界を守りたいのです・・・!」
「・・・成程・・・」
そして更にこういう理由だからと説明する司馬懿に稲姫は即決して頷き、強く真っ直ぐに答えるその顔に納得したように頷く。









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