女忍、苦労する

そんなティアが事実を知った上で生き残ったなら、二人に対して複雑な気持ちを抱くだろう・・・だが敬愛するが故に、二人に対してそれ以上を行動に移す為の踏ん切りをつかせる事が出来なくなるのだ。

モースに対しては不当だと思いはしても元々取ってきた行動が行動なだけに死罪を願われるのは当然と突き付けられれば、所詮一個人である事もあるが取った行動に妥当性が全くないティアはどう反論してもモースの判定をひっくり返す事は出来はしない。

そしてそこからヴァンに対してはそんな自身の行動を知った上で兄として助け船を出したのだ。例えそれが正規の手続きを踏んでないような代物であったとしても・・・その事を考えるとヴァンに対して表向きとは言え見せていた敵意が薄れ、続けて敵対してでも兄を止めようという姿勢は無くなるだろう。よしんばその姿勢を何とか維持して敵対しようにも、ヴァンに対して様々な感情が渦巻くだろうことから何を言われようとも迷わず行動することは不可能と言っていいだろう。

・・・そして他にも色々あるだろうが主にその二人に対しての気持ちで板挟みになり、最終的にティアが選ぶ可能性が高い選択はモースの怒りを再度ぶつけられることを怖れてヴァンの甘さにすがりついて安全な位置にいることを選ぶ・・・そうくのいちは考えたのだ。



「まぁそんなことにさせるつもりはないけどね、旦那様は♪一応はあの娘の事も状況から助ける事にはなるだろうけど、そこから先はちゃんと自分のやったことを噛み締める時間に費やしてもらうことになるだろうし♪」
だがそんなことにはならないと再びくのいちは笑う、孔明が二人の企みを阻止した上で改めて罪を突き付けるからと。





















・・・それからくのいちは自身のやることが無くなったからと、早目の休息を取った。翌日以降に控える大事に備えて。

そして朝日が登るかどうかという時に目を覚ましたくのいちは、足早にイオン達の泊まる宿の方へと向かう。



「・・・おっ、ちょうど導師を連れ出した所っすか?」
「あぁ、丞相の嫁さんかい・・・悪いけど人目のない時間だからってあまり時間をかけてらんないんだ。話なら中のアニスとしてやってくれないかい」
「はいは~い、んじゃね~♪」
それで宿の入口から連れの男二人に表向き拘束されて連行されるイオンと先を歩くノワールの姿を確認し、くのいちは陽気に話し掛けるがアニスに聞くようにと簡潔に言われたために反論するでもなく笑顔で手を振り四人を見送る。



・・・それから数分後、宿の入口からアニスが出てきた。
「あっ、もう来てたんですか?」
「うん、今日に備えて昨日早目に寝てたのもあったしね~♪それより昨日アニスと別れてからの事を話すから、話を聞いてね~」
「はい、分かりました」
アニスが入口近くで待機していたくのいちに軽く驚くのだが、全く気にした様子もなく話を進める様子にも慣れた物ですぐに頷いて話を聞く体勢に入る。









「・・・謡将がそんなことを・・・」
「そうそう。だからあの一行に加わるのはそんな難しくないと思うよ?謡将が離れたのを見越してからじゃないと色々面倒だろうけれど」
「その事を聞いたら謡将が反対する可能性が高いからですか?」
「それもあるけど、私がまだこっちにいることを知られるのが面倒だからだね。一応私旦那様と一緒に帰ったって認識になってるだろうけど、そうじゃないって知られたらどういうことかって思われかねないし」
「あぁ、念の為って事ですか」
それで話を終えたくのいちから合流するタイミングについてを聞かされ最初は疑問に思うものの、理由を聞いてアニスは納得する。念の為なのだと。








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