未来と過去に繋がる後悔

「・・・フン、ならば私が貴様の後を引き継いでやろう」
「貴方が私の後を・・・ですか?」
そんな様子を見た司馬懿は鼻を鳴らし尊大な口調で返し、孔明は意外そうに漏らす。司馬懿がそんなことを言うとはというよう。
「なんだ貴様、私がそのように言い出すと予測も出来なかったというのか?」
「そのような事を願って話をしたわけではありませんし、そもそも私と貴方の関係からして貴方に頼みごとを出来るような間柄ではありません。いえ、むしろ貴方の性格を考えれば例えそう頼んだとしても貴様の後釜など頼まれてもなるかと言うと思ってましたよ」
「・・・まぁ貴様と知謀を競っていた時に言われていたなら、確かに戯れ言をと言っていたであろうな。しかしもうそれも過去の話であり、貴様ももう余命幾ばくもない状態だ。そんな貴様に対しての対抗心など今更燃やしても馬鹿らしいと思ったのもあるが、何より貴様らの話を聞かされて安穏と過ごすだけなど私の自尊心が許さぬからだ。放っておけば比喩などでも大袈裟でもなく世界が終わる可能性が有り得ると聞き、それをみすみす見逃して世界を終わらせるなど私が愚かだと認めることになるということにな」
「・・・成程、貴方らしいですね」
司馬懿が不服そうにその反応について口にした為に孔明が理由を返すと、納得しつつもその内心の内を明かしていくと孔明は苦笑気味に笑う・・・尊大で自信家な司馬懿ではあるが、同様にその人並み外れた頭があるからこそ愚かと言える事を嫌い、自分が愚かになりかねないことを否定するのが大事と見たのだと。
「・・・そう言うことなら貴方に私の後を任せることに異はありません。貴方ならその能力からうまくやっていけると思いますからね・・・ただいくら私からの口添えがあったとしても、重要な地位にはすぐにはつけないとは思いますが・・・」
「構わん。そのような口添えで地位を得たとてろくなことにならぬのは目に見えているし、私自身の力で上に行けぬならそれまでの事だ」
「フフ・・・敵であった時はその自信に満ちた不遜さが厄介だと思っていましたが、こうして話をすると心強く思いますよ」
「フン・・・」
そんな司馬懿に地位についてはと口にすると自分でやると言い切るその自信に満ちた返しに孔明は微笑み、少し不機嫌そうに司馬懿は視線を背ける。
「・・・ただそうは言ってはいただきましたが、私はもう世界が僅かでも長く平和に続くことを願うしかない身です。そう言っていただけたのなら貴方は私の気持ちを掬い取っていただけるかとは思いますが、貴方は貴方のやり方で行動してください。導師になるのが早いと思ったなら導師の座を狙うのもよろしいでしょう」
「・・・話によれば今もまだ導師の座にいるイオンは歴代導師の血脈を残さない為に結婚もせず、子どもを残すこともしなかったのだったな」
「えぇ・・・導師は本来なら被験者のイオンが死んだ時点で存在しなくなって終わりでしたが、謡将の行動により今のイオンは生まれました。そんな彼には無理をしなくてもいいとは言いましたが、自分の子どもが出来て自分が死んだ時に導師としての後釜にさせてしまうのは本人にもそうだけれど、後の世代で血脈が途絶えたとなったなら良くないことになる・・・そう言って結婚はしないままに過ごしていき、周りにも自分で歴代導師の血脈は終わりにして的確な誰かがその地位を継げるようにすると動いてきました。ですから貴方が導師としてその立場に立つことは十分に可能になりますから、周囲からの目はともかくとしても動くことは出来ると思いますよ」
「・・・私の上に立ってもよいと思える存在がいなければそうしよう」
「そうですか。まぁ無理強いはしませんよ」
孔明はそこから導師になるならという話題にイオンについても混ぜながら話をしていき、司馬懿はその話に即決はせずに返して孔明を一先ずは納得させる。司馬懿の性格上慎重に事を進めるべきだという考えが見て取れた返しに。









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