未来と過去に繋がる後悔

「ですが私達はそれらを為し遂げました・・・今となっては最早預言は遠い過去の物となり、三十以下の方々はもう預言は詠まれてない状態の方が普通である筈ですがどうですか?」
「それは否定はしない。そして歴史についてを調べた時もそうだが、貴様から話を聞いてより一層そのままの状態でなかったことが良かったというように考えた。まぁそもそもを言うなら預言通りになっていたなら、今頃は最早取り返しのつけようのない事態になっていて例え私がどうにかしようとしたとしてもどうにもならなかったであろうな」
「貴方にしては随分と簡単に出来ないと言いますが、実際にその時にはもう誰がどう動こうとしたところで取り返しなどつかなかったでしょうね。預言の中身から考えたならマルクトからもたらされる病を世界に広めないようにすることなど到底不可能だったでしょう。人の流れを止めることなどそれこそマルクトの人間全てを皆殺しにする以外に無かったでしょうが、エンゲーブという世界の台所事情を担う場所に誰も置かないなどとしたなら飢餓により世界は滅びていたでしょう。ですからどう頑張ったところで病は押し止めるのは不可能だったのは目に見えていた上、障気が噴出したならそれこそ止めようが無かったでしょうからね」
そんな考えもあってと孔明が言った上で問い掛けを司馬懿に向けると預言通りに行ったなら自分でも無理だと珍しくもハッキリと言いきったのだが、間違いはなかっただろうと根拠を口にして行く。やはりマルクトと言うかエンゲーブの事があるからこそ、どうしようもなかったのだと。
「・・・少し話を戻しますが、貴方の両親は今のこの世界やダアトをどうお考えですか?世代から考えてこちらでの貴方の両親は預言があった頃には生まれていたかと思いますが・・・」
「賢人とは言い難いが、愚物とも言えん所謂普通の家庭の人々だ。そんな両親は幼い私がこの世界の歴史についてを聞いた時に預言についてを語ってくれたが、幼い頃は預言があることに関しては素直に受け入れてはいたが貴様らが真実をぶちまけて以降は次第に懐疑的になっていき、預言が詠まれなくなって十年も経つ頃には別に預言が詠まれなくても何も困らないと言った考えとなり普通に暮らしていたそうだ。まぁその反面としてこちらでの祖父母にあたる者達は預言があることに慣れきっていた事から、自分で一から十まで全てを自らで判断することに煩わしさを覚え、事あるごとに預言が詠まれる環境が復活しないものかと口にしながら死んでいったようだな」
「そうですか・・・やはり世代間によって大きく差はあるでしょうが、これからの事を考えればやはりもう預言に頼りたいと思う者達はいなくなっていくでしょう。後は預言を詠む環境が復活しないよう、そして星の限界が来ることを出来る限り遅れるようにと祈るくらいです」
「話にあった障気の事からか」
そこから話題を少し戻して預言に対しての司馬懿のこちらでの両親についての考えについてを聞くと、両親だけでなく祖父母までもの様子を加えて返してきたことにこれでいいとしつつ祈りたいと口にする。世界の終わりが遅れてほしいと。
「えぇ・・・今もお話ししましたが、今頃は預言に詠まれていた通りなら病が蔓延することであったり障気が世界を覆いつくしている可能性は高かったでしょう。そしてそんな未来を変えるために動きましたが、未来を変えたからこそもう預言が詠まれた本来の意味であるこの未来を変えてほしいというその言葉を元に動くことは出来ません。そして私はもうこの通り、寝台から体を起こすこともままならない状態です・・・ですから私が出来ることは後世に生きる方々が短慮に身を任せた行動をして、このオールドラントの延びた寿命を早めに消してしまわないようにと祈るくらいしか出来ません・・・」
・・・どうあがいても、もう自身は長くないし何かどうにかしようと活動も出来ない。だからこそ祈る・・・そう口にしながら孔明は目を閉じた。後に残る者達の事を思い、そうならないでほしいとの願いを持ちながら。









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