未来と過去に繋がる後悔

「少し話がズレたかとは思いましたが、そんな貴方からしたならモースは我慢ならない存在だということは確かでしたでしょう。とは言え貴方ならそんな内心を悟らせることなくモース達の懐に潜り込んで事を為していたでしょうが・・・貴方ならどのような世界になるようにと動いていたのか、少々興味はありますね」
「今言ったであろう。同じような事をしていただろうと・・・確かに愚物を相手にするのは苦痛ではあっただろうが、預言の中身を考えその性質を知ったなら以降に戦を出来る限り避けるべく動いていたであろう・・・だがそんな預言の中身が都合の悪い物であったなら受け入れなかったであろう者の代表のような存在がモースだということであるから貴様は始末したのだな」
「えぇ。どのような条件を呑んでいただいたとしても彼を生かしておいたならその条件を破り、後の禍根になるのは目に見えていました。おそらくなどといった仮定の言葉を使うまでもなく、彼は預言の実現の為にとあらゆる手段を用いてマルクトを始めとして世界各地に被害をもたらしたでしょう。それこそ世界が全て滅びても預言はこんな未来を詠んではいない、誰かが預言を歪めたからこのようなことになったのだと自分のせいではないと言い切る形でね」
「・・・聞けば聞くほど愚かという言葉が似合いの凡愚だな。だがそんな預言がいいものだと信じて疑わない凡愚が聖人と崇められ、本当はこういう人物であるという考えを持たなかった者達がほとんどだったのか」
「えぇ・・・今となっては遠い昔の話ですが、子どもの頃は本当に周りの者達は同じ人間なのかと疑った程でしたよ・・・」
「・・・貴様が子どもの時に何があったというのだ?」
孔明はその話の流れを訂正して会話を続けていく・・・のだが、滅多にない孔明の遠い物を見るような表情に司馬懿も興味を示したようで何があったのかと先を促す。
「・・・こちらでの私の親ですが、父は詠師とまではいかなくとも教団の中ではそこそこの地位にいる人で母は預言によりそんな父と結婚をしました。ですがそんな父と母は私を生んだのもあったことからでしょうが、最低限の礼儀に作法などを教えるくらいで両親共に私にばかりか互いに関心を向けることなく過ごしていました」
「・・・それは預言に詠まれた相手だから結婚した上で預言に詠まれたから子どもを作った、という義務感だけでやったことだということか」
「えぇ、そうです。預言に詠まれたからとそれに従った結婚が全てが全てうまくいった訳ではありません。中には相性が良く喧嘩一つしないような夫婦もいましたが、預言に詠まれたなら政略結婚以上にそうするべきだという見えない強制力を働かされて無理矢理であったり、それこそそういうことなら結婚するしかない・・・というような仕方無いといった事から結婚する者もいたことはよく知っています。それこそこちらでの両親もそうですが、ある程度地位のある者達はそういった形で結婚していたことはダアトで暮らしている中での夫婦の姿を見てきたことでよく理解していましたよ」
「・・・そう聞けば教団の地位ある者達も貴族として大して変わらん物だな」
「えぇ。ただ預言なら仕方無いと思いはしても、それに沿わない時間ならどうにでもしていい・・・そう思っていた方が多かったということです」
そんな孔明がいかな風に両親と対峙してきて当時の様子を考えて見てきたのか・・・それらについてを思い出しつつ語っていく。









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