未来と過去に繋がる後悔

「ですがもうそれも過去の事です・・・くのいちから三国の事を聞いた私は自身の愚かさに気付き身に染みて理解しましたが、最早起きてしまった過去の事・・・それも死んだ後の事など誰にも変えようはありませんから、そこについては受け入れています。それに個人的には貴方の事は敵ではありましたが、貴方は貴方のやることをやっていただけであると貴方の事はそれなりに敬意を持っていましたよ」
「貴様が私に敬意だと?」
「えぇ。信じられないかとは思いますし立場上そのようなことは言えませんでしたが、貴方の能力は確かであることはよく知っていましたからね。ですから当時敵対していた蜀の方々はどうかは知りませんが、私は貴方の事は嫌いではありませんよ」
「・・・フン、そんな事を聞かされても嬉しくなど無いな。だがその言葉は受け取ってはおこう」
「フフ・・・」
だがそれらはもう受け入れたことと言いつつ司馬懿の事は気に入っていたと話す孔明に、当人がらしいと言えるような皮肉の返しをしたことにそっと微笑む。司馬懿の性格上孔明の称賛を素直に受け取る事はないのはよく分かっていた為に。
「んっ・・・ちなみに聞くが、昭の興したという晋はどうなったかは聞いているか?」
「あぁ、それは聞いています・・・簡潔に言うなら司馬昭の息子までは晋という国の形は保たれていたそうですが、それ以降の世代で乱が起こり晋は崩壊したそうです。そしてそれ以降も誰かにより度々乱が起こり統一してしばらくしたらまた乱が起きるという流れが千年以上だったそうですが、そこに関しましては最早我々の関知するところではありませんのでその辺りでいいですか?」
「あぁ・・・興味はないとは言わんが、もうここでは意味の無いことであるし昭にその子どもが国を統一してまとめあげていたという事実が分かればそれでいい。流石にそこまでの時間が進んでいたなら私の教えが到らなかったなどということもないであろうし、そこからの話を聞く限りでは結局は時が経てども戦になり得ない治世に名君など出てこなかったのだろうからな」
司馬懿はそんな様子に露骨な咳払いと話題転換を切り出し、孔明がそこを突くことなく歴史の移り変わりについても答えていくと満足したというように漏らす。
「それはいいのですが・・・私は貴方に会えたことに関しては嬉しく思いますが、肝心の貴方が私の元にわざわざ来られた理由はなんですか?貴方の事ですから、ただ世間話をしに来たなどということはないでしょう。それともこうして弱っている私の息の根を止めに来たのですか?」
「フン、つまらん冗談はよせ諸葛亮。前の時のように敵対しているならともかく、今の貴様と戦う理由などない。ましてやわざわざ貴様を殺す理由もな」
「おや、私の事を嫌ってはいなかったのですか貴方は?」
「貴様の言葉ではないが、我々が敵対していたのは立場の違いからだ。貴様個人の事については気に入っているなどとは言わんが、だからと言って復讐を思うほどに貴様に執心する事もなかったが・・・何より貴様との戦いは今の貴様の体の事もあるが、五丈原で私の中で終わっている。だから別に貴様に対して敵対心などは私の中にはない」
「成程、そういうことですか」
そういった様子を見てから用向きについてを問う中で自分を殺しに来たのかと孔明が口にするが、司馬懿は全くそんな気はないと強く言いきる姿に納得した。度重なる戦いから司馬懿の人間性を理解していることから、孔明に対して嘘をついている訳ではないと理解した為に。









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