未来と過去に繋がる後悔

「・・・しかしこうしてこのような形で再び貴様と会おうことになろうとはな」
「フフ・・・とは言えもう彼女も私も長くはありません。ですが私としては少し嬉しくあります。敵であった貴方に言うような言葉ではないかとは思いますがね」
「正気か、貴様?貴様なら予測はついているかもしれぬが、私は貴様から魏を守りきったことで以降の蜀の弱体化を招いたのだぞ」
「えぇ、知っていて言ってます。そしてくのいちから聞いています・・・貴方の息子である司馬昭により蜀はおろか、魏も呉も滅びて晋として三国は統一されたことは」
「何・・・?」
そこで改めて司馬懿が再会についてを口にして孔明が微笑を浮かべる様に悪態をつくが、くのいちから聞いているとその後の三国時代の事を口にすると司馬懿は怪訝そうに漏らす。
「彼女が後の時代の日ノ本の国の人であることは聞いたでしょう。そんな彼女は魏呉蜀の顛末を書物で知ったそうです。大まかに言えばまず蜀が滅びて次に司馬昭が実権を握った魏を改めて晋という呼び名にする形にし、そして最後に残った呉を滅ぼして三国の統一を為したと」
「・・・それを昭が為したと言うのか・・・フン、やれば出来るではないか昭」
自分が没した後の三国はどうなったのか・・・その顛末を聞いた話と言いつつ話す孔明に、司馬懿は嬉しそうに微笑を浮かべる。才能はあると期待をしていたが普段はやる気を見せない子どもで、そんな子どもが偉業を成し遂げたのだということを聞き。
「息子を誇らしく思っている所にすみませんが、そうした話を聞いたからこそ私は自身の愚かさをその時に身に染みる形で受け入れたのです・・・当時の私は時間をかけて蜀の国力を強化しても魏も同じように国力を強化するのは確かであり、領土の広さに大きく差があることから時間をかければ兵力を始めとして蜀が不利になることから、魏への侵攻を今のうちにしなければならないと魏を倒すことに専心してきました。ですがそうして動いてきた結果は貴方の守りを抜くことが出来ず、魏の兵力を削りはしたもののそれ以上の蜀の弱体化という物でした・・・そして蜀は魏によって滅びることになったのです」
「・・・まさか貴様、蜀が滅びたのは自分が全て悪かったとでも言うつもりか?」
孔明は一応の謝りを入れつつ話を進めるのだが、その中身に司馬懿は思い上がりだろうというよう少し苛立ったように口にする・・・どのような繁栄をしてどんな優れた人物がいたとしても国は滅びる時は滅びると、司馬懿達は過去の事からよく知っている為に。
「そうは言いません。ただ・・・私は彼女から話を聞いた後、自分が囚われていたのだと思い返したんです。殿より託された蜀に劉禅様を支えて発展させることもそうですが、その根底に曹操の興した曹魏を打倒したいという気持ちが私の中にあったということに」
「曹魏をだと?」
「・・・私は荊州にて殿より三顧の礼を受けて配下となることを選びましたが、そもそも私は荊州出身ではありません。曹操の激しい進軍により住む場所から移動せねば命を失うということから荊州に命からがら逃げ延びましたが、今でもその時の事を思い返すと気分が良くないんです。あの進軍はただ激情に任せて進軍した先を無情に焼き払い、そこに住まう我々の事など一切考えていませんでした・・・実は殿より三顧の礼を受ける前に曹操より仕官の誘いもあったのですが、袁紹を倒した曹操がこのまま天下を統一を成し遂げるのも時間の問題であろうという考えもあいまり曹操に仕える気にはならなかったんですよ」
「だが貴様は劉備の三顧の礼を受けたことにより、曹魏と戦う道を選んだ。そして貴様は当時は自覚はせずとも、住みかを追われたことから何処かで曹魏の打倒を強く願っていたということか」
「今となって分かること、ですがね・・・」
孔明はその言葉を否定しつつ自分の立場からいかな気持ちを曹操に抱いていたか・・・そう司馬懿に話したのだが、そこまで言って孔明にしては珍しく後悔を滲ませるよう苦悶の表情を浮かべた。









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