未来と過去に繋がる後悔

「ただそうしてダアトにローレライ教団について疑問どころじゃない考えを抱いてしばらくしてた時、私の耳に届いたのが孔明って名前だったんだ」
「孔明様、ですか・・・」
「私も三国時代のことは親方様が書籍で読んでた関係から知ってたけど、このオールドラントって世界で聞くなんて思わなかったからたまらず会いに行って探り探り話を聞いてみたら、本当の諸葛孔明で私と同じような世界から来て同じような価値観を持つ人がいるって知って本当に嬉しかったんだ・・・そして調べていけばいくほどに出てくる教団の預言に関しての暗部に、それに対して世界丸ごとを壊そうとしたヴァン謡将達の企み・・・だから私に旦那様は共に目標を持って活動が出来た。その事に対して不満とかそんなことなんて一切なかったし、なんだったら充実した時間を過ごせたって言えるけど旦那様は同じ世界じゃあっても国も生まれた時代も違うから、同じ時間を生きた思い出にはここで生きてきた時間でしか浸れなかった・・・けれどこうして稲ちんに会えて話を出来たことで、もう遥か遠い昔になっちゃった前世の思い出に浸ることが出来た。だから私としては稲ちんにまた出会えたってだけですごく嬉しいんだ・・・あの時間を過ごしてたのは嘘や記憶違いなんじゃなかったんだって思えてね」
「っ!・・・そう、なんですか・・・」
・・・くのいちがそっと微笑みながら口にした言葉に、稲姫は何とも言いがたそうな声しか出てこなかった。前世の記憶があることもそうだが同じ立場の誰かがいない孤独感がいかな辛さがあるのかを、少なからず稲姫も感じてしまった為に。
「あはは、だからそんな顔しないでって稲ちん。稲ちんに会えて嬉しかったのは変わりないし、旦那様に不満を持ってるとかそういう訳じゃないんだから。それに旦那様も司馬懿さんに会えたことに私と同じような気持ちを抱きながら今頃話してると思うよ?」
「・・・でも孔明様は司馬懿様と敵対関係だったから、私達のようにはならないのでは・・・?」
「旦那様から聞いた話からの司馬懿さんの印象もあるけど、あの人確かに居丈高ではあるだろうけど弁える所は弁える人だと見たよ。少なくとも今日は旦那様に攻撃とか暗殺をしに来たとかっていうことはないと思うし、旦那様もそうだって思ったから二人きりで話をするって決めたと思うから」
「そこまで分かってるんですか・・・孔明様を旦那様と呼んでるのには驚きましたけど、貴女はそれだけ理解出来るほどに関係を孔明様と築いてきたんですね」
「まぁ旦那様とは色々あって肉体的な契りは交わしてないけど、夫婦っていう形で長年連れ添ってきたからね~。そりゃ分かることはそれなりに出てくるって」
「そうなんですか・・・」
そんな顔に気にしないというようにくのいちは話を進めていき、稲姫はその中身にちょっと意外というように漏らす・・・稲姫から見たくのいちは控え目に言ってもどこか幸村に対して女性として憧れや好意を抱いているように見えたが、必要であったとは言え他の男性と夫婦になってそれを当然という姿を見てしまったことに。









「・・・フン、成程。あの女と夫婦になっていたのはそういう訳か」
「月英への操立てという気持ちが無いわけではないのも事実ではありますが、やはり政治的な意味合いでの見合いからの婚姻を結ばれても元々の私の目的もあってろくなことにはならなかったでしょうからね。その点で彼女と出会えてこういった条件で夫婦になろうとすり合わせが出来たことは幸運でしたよ」
「フン、貴様らしいな」
・・・場所は移り、隣の孔明の部屋にて。
話が夫婦の話題になって孔明が返した言葉に、司馬懿は以前の関係のままだったら絶対にそう返さないだろう抑えた声で返す。敵意も何もない、司馬懿からして普通の会話をする声で。









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