未来と過去に繋がる後悔

「・・・各々思惑があって、どちらかに皆はついてた。けど幸村様は打算で動くような人じゃなくて、豊臣方に忠義を抱いてた・・・そんな幸村様が負けたまま徳川軍を放っておくなんてないだろうから、人知れず何処かで死んだっていうのが一番可能性が高いだろうなって思ったんだ。そしてそうじゃなかったら生きていてほしくなかった訳じゃないけど、幸村様らしくないかなって・・・」
「幸村らしくない、ですか・・・確かにそうですね。私も想像してみましたが、命惜しさに私達に降伏などというような行動を取るような人物ではないと思い出しました」
「うん・・・だから幸村様は幸村様らしく逝ったって知れただけでも満足だよ。むしろ下手に捕まって徳川軍に頭を垂れたなんて言われるよりは全然よかった」
「・・・私としては信之様と幸村が仲良く過ごしてくれる未来であったら、より良かったんですけどね・・・」
「あはは・・・まぁ稲ちんの立場からしたらね~・・・」
そんな大名や将軍達の中で幸村はどういう人物であったか・・・それを二人ともに思い返すように話を進めていくのだが、稲姫の悲し気な表情にくのいちは苦笑するしかなかった。旦那となった信之とその弟である幸村とはどちらとも仲がよく、戦いの場では凛として毅然な稲姫でも身内が亡くなる事に全く思わないところがないような薄情さとは縁遠い性格をしていた為に。
「・・・ごめんね、稲ちん。辛いことを思い出させて」
「い、いえ・・・こうなったのは稲自身の責任ですし、今の貴女の頼みくらい出来ることがあれば何でもしたいくらいです・・・もう三ヶ月もすればお別れだと思うなら、それくらいは・・・」
それで謝りの言葉を向けるくのいちだが、大丈夫だと言いつつもやはり別れが近いということに重荷を感じながら稲姫は表情を明るく出来ずにいる。
「出来ることが、か・・・大丈夫だよ、もう稲ちんにはそれをしてもらってるから」
「え・・・それはどういうことですか・・・?」
「このオールドラントっていう日ノ本のない世界に生まれ変わってからさ・・・旦那様に会うまでどうしようってずっと悩んでたんだ。こんな元の場所とはあまりにも違う世界に生まれて、いざ開き直って暮らしてみようとしたなら日ノ本での時の戦の比にならない程に大きな世界規模での戦が歴史を紐解いていけば存在していた・・・それも預言通りになるように」
「それは・・・」
くのいちはそんな稲姫へと笑顔で大丈夫と言うのだが、自身の昔話をしていく中で出てきた預言についてに稲姫は難しげな表情を浮かべる。



・・・今となっては孔明達の努力の甲斐もあり、預言はもう過去の遺産へと成り果ててしまっていた。かつては日常生活にまでも深く入り込み預言がなければ生活が出来ないと言われる程だったが、もう預言も詠まれなくなって三十年以上の時が経ち詠まれなくなった預言に固執するような人物達は過激派は軒並み排除されたのもあいまり、実際に預言があった頃の利便さを知らない者達が多くなった今となっては過去の物だ。

しかしそれはあくまで今を生きる者達からすればの当たり前であって、三十年以上前の預言があった全盛期・・・特にホドの戦争があった時期は酷い物だった。

前にセントビナーに行った時に老マクガヴァンは神託の盾の介入がなければまだ守りきれた可能性があったみたいに言っていたが、何も神託の盾はその時に誰一人として死なず傷付かずといったように動けた訳ではない。むしろ逆でキムラスカにマルクトに神託の盾と入り乱れた戦場は激しさと共に混沌としていたことに加え、預言を達成させるために場をかき乱す役目を預言保守派から任された神託の盾は・・・最終的にホドが崩落することもあって元々から死んでも問題ないし、生きて帰れば再び使える人材といった程度にしか見られていなかった。

故にその時にホドに派遣された神託の盾にも様々な事によって人員的には大きな犠牲があったのだが、その中にはこちらの世界においてのくのいちの親がいたのである・・・









.
5/24ページ
スキ