未来と過去に繋がる後悔

「・・・ただそうは言うものの、ほとんどは貴女の言う通りになりました。大阪城は落ちて豊臣方は負け、徳川の天下になりましたが・・・幸村は最後まで家康様の元まで来ようと突貫してきてそこを何とか撃退したまではいいものの、どういう訳か幸村の死体は見付からず以降はどこにも姿を現すことはなく消えたままでした」
「えっ?どういうことなの?」
「それは分かりません・・・けれど幸村は捕まって処刑された訳でもなく、ハッキリと討ち死にしたとも誰もその後の行方を知らないんです。ただ幸村の性格を考えるなら命惜しさにどこかに逃げたとは考えられませんし、ましてや行方知れずのままで終わるようなことになるとは思えません。だから何とか徳川軍が撃退した後に人知れない所で亡くなったと言うのが私や信之様の考えです・・・あの時の幸村の凄まじさは間近に迫られた家康様が日ノ本一の兵だと評するくらいでしたが、徳川軍の攻撃を受けたことに加えて尋常とはかけ離れた様子に見えたことから命を賭けたからこそあそこまで動けたのではないかと見たので・・・」
「・・・そっか、幸村様はそうなったんだ・・・ちょっと安心したかな。幸村様は幸村様らしく最期を飾ることが出来たんだなって・・・」
「・・・貴女はその後、幸村が生きているとは思わないんですか?」
稲姫は改めて幸村がどうなったかについてを予測を交えて口にしていき、くのいちがらしいと微笑を浮かべ最期と口にしたことに疑問を口にする。
「・・・あの時の大阪城での戦いのことを覚えてるなら分かるでしょ?今なら言えるけど、元々豊臣方に勝ち目なんかほとんどなかった。それでも降参せずに戦うってなったのは豊臣を担いでいた大名達の忠誠が暴走したって言うのもそうだけど、徳川の天下ってなったら元々豊臣方についていた自分達が得られる旨味がないって大名達の考えから来たものって意味もあるしさ」
「それは・・・」
「いや、否定しなくていいよ。豊臣方もそうだし、徳川方も忠誠だけで従ってきた人ばかりがいたわけじゃないでしょ。特に政宗さんとかそうじゃないって否定出来る?」
「っ・・・否定、出来ません・・・」
それでくのいちが当時の事を思い返すように忠誠だけで起きた戦いではないと口にしたことに稲姫は異を唱えようとしたが、政宗と出てきた名前にたまらず首を横に振った。



・・・くのいちが言った豊臣方と徳川方とは元々豊臣秀吉という人物がくのいちのいた島国を統一したのだが、秀吉が死んだ折に秀吉の子どもである秀頼と次点で実力者であった徳川家康の事である。

この二人が争うことになった時、島国の中の各地域の大名や将軍達はどちらの陣営に着くかを決めてその側で戦ってきた。だがその理由は恩義や忠誠に義理といった表向きに誉められる理由からもあれば、どちらに着いた方が旨味があるかに勝ち目があるからといった打算からの理由もある。

現に二人が口にした大阪城での戦いの前に関ヶ原という場所で徳川と秀頼を担ぎ上げた人物の筆頭である石田三成という人物との大規模な戦いがあったのだが、そこで徳川方は敵軍の裏切りがあったことから石田三成に豊臣を大きく打ち破った。

その事から天下の大勢は徳川の方に大きく傾いて最早豊臣方に勝ち目はないと見られて諸国大名たちの多数が徳川の方に流れた・・・ここでハッキリと忠誠を誓った訳ではないが戦えば負けるのは目に見えているから従ったのが、伊達政宗という人物だからくのいちから名前が出たのだ。誰にも本心から忠誠を誓うような人物ではない、野心的な存在だと見られていたからこそである。

だがそれでも豊臣方についた大名に武将達は何人もいた。それは忠誠に豊臣方に何らかの縁があった者がいたこともそうだが、今まで豊臣方についていた自分達が徳川の方に寝返った所で得られる旨味などないと思ったり何だかんだで豊臣ならまた巻き返せるのではないか・・・といったような考えからである。故に残った豊臣方は様々な思惑はあれども徳川方に降伏することなく戦うことを選び、その中に幸村がいたことからくのいちも共に戦うと決めたのである。最早戦っても勝ち目は薄いと、そう感じる中で・・・









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