未来と過去に繋がる後悔

・・・かつて詠まれていた預言は、繁栄ではなく滅びの道筋が詠まれていた物だった。そう事実が様々な事件と共に明らかになっていき、オールドラントは変わっていった。本来存在しえぬ筈の者達により、様々な障害はあれども滅びの道を避けていく形でだ。

そうして生きてきた存在しえぬ者達であるが、生ある者にはいつか死という結末が訪れる・・・預言による滅びを避けてから三十年以上の時が経った時には、結末を変えたきっかけである二人の男女は床に伏せて立って歩くのもやっとといった状態となり、最早後は死を待つのみと誰もが認識する物となっていた・・・









「・・・まさかこうして貴方までもがこちらに生まれ変わっているとは思いませんでしたよ、司馬懿」
「フン、その言葉にのしをつけて返してやろう。最初に貴様がこのオールドラントでかつての預言にヴァン一派の争乱に関わっていたと知った時、また貴様がいるのかと思ったぞ。諸葛亮よ」
・・・ダアトの孔明が住まう部屋にて。ベッドに寝て脇に備え付けられた椅子に座る人物に微笑の顔を向けつつ話をする孔明に対し、居丈高な様子で司馬懿と呼ばれた人物は言葉を返す。
「・・・最初貴方ともう一人の女性が私達に会いに来たと聞いた時は驚きましたよ。まさか我々以外にあの世界からこのオールドラントに来た者、それも私達それぞれに関わりのある者達が来たと聞いた時は」
「それもまたこちらも同様だ。私は始めは一人で貴様に会いに来たのだが、そこで出会った稲姫という人物が貴様のこちらの妻と知り合いだというから話を聞いてみれば・・・まさかこのようなことになるとは思っていなかったからな」
そんな二人は自分達の立場に関することを話し合い、共に驚きがあったことを口にする。



・・・現在この部屋には孔明と司馬懿しかいないが、特別にくのいちの為にと空けた隣の部屋にはくのいちと彼女と同じ時を生きた稲姫という人物がいる。司馬懿と稲姫、この二人もまた孔明達と同じくオールドラントに生まれ変わってきたのだ。

そんな二人は丞相(大詠師の地位につかないかという誘いに関しては結局孔明は固辞した為、地位はそのまま)が床に伏せたという話と名前を聞いて、直に会いたいと揃って嘆願に来たのだが・・・そこで司馬懿が司馬懿だと名乗り出たことに稲姫が反応し、その時に多少揉めてしまったのだ。

ただそのおかげというわけではないが、騒ぎについてを察知した孔明とくのいちが顔を出したことにより一先ず騒ぎは収まった上で各々のみで話し合うようにしよう・・・となったのである。



「驚きましたよ、ホントに・・・前世でしか聞いたことがない諸葛亮様の名前を聞いたと思って会いに来たら、そこで出会ったのが司馬懿様でそうしてここでまた貴女にまで出会ったなんて・・・」
「にゃはは・・・それはこっちもっすよ。まさか稲ちんに司馬懿さんまでこっちに来てるなんて思わなかったもんで」
・・・所変わり、隣の部屋にてベッドで横になるくのいちに司馬懿と同じ形で話し掛ける稲姫に笑顔で返すが、その様子に稲姫は悲し気に表情を曇らせる。
「・・・もう立つのも辛いというのは本当なんですね」
「・・・やろうと思えば素早く動くことは出来るとは思うけど、多分そうしたら死期を早めるだけだと思う。と言うか、旦那様も含めて三ヶ月生きれればいいとこっていうのがお医者様の診断だよ」
「・・・そんな・・・」
そうして口にしたくのいちの容態についての言葉に当人から観念したように返ってきた自身らの体調についてに、稲姫は涙を目に浮かばせた。









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