軍師と女忍、未来を繋ぐ

・・・戦争は相手の首魁を倒すまで続けなければいけないし、終われないというものではない。そんな風な物だったならむしろ戦争は余程でなければ起こすべきものではなくなる・・・故に戦争を起こしたとしても落としどころというものを見出だし、被害を出来る限り少なくするのがまだ建設的なことである。

だが最初からマルクトを蹂躙してピオニーを殺すことが目的だったキムラスカがその後に支配などと言ってもマルクトの人間が簡単に受け入れられる筈もないが、ダアトもダアトで戦争を止めるために何もしなかったかむしろ戦争にキムラスカ側へ手伝いをしていたとなったなら・・・キムラスカに対する気持ちと比べても見劣りしない程に憎悪に怒りを抱くことだろう。預言があっても、いや預言があるからこそ余計にだ。

預言があったなら、こんな風になると詠まれていたなら何故ダアトはそれを止めることが出来なかったのか・・・そういったように前のようにマルクトに預言を詠む為に来訪した預言士達に言うだろう。しかしそんな預言士が返す言葉は今は苦しいだろうが未来にはそれが報われると言ったような、明確な答えを返しもしないでただ我慢することが正解だという言葉なのはまず間違いない。

マルクトがそんな状態になれば、ダアトが派遣してくる人物など事情など何も知らない上にマニュアル対応くらいしか出来ない預言士しかいないのは分かりきったことだ。いくら預言通りにしたからとは言え・・・いや預言通りにしたからこそ、モースのような預言の中身を知るような者などマルクトには一歩足りとて入ろうとすらしないだろう。セントビナーにグランコクマはかつての様相から見る影もない程に壊されて居心地が良くないのは目に見えている上、そもそも預言に行けと詠まれてもいない所に行く理由など全くない。だからこそ適当に何も知らない預言士を前のようにマルクトに送り出していい顔をすればはい終わり、とするだろう。後の事はその者達に任せて自分達は繁栄を楽しみ、後は勝手に再建するなりそのまま滅びても食糧さえ作れればどうでもいいと放置すればいいとなる形でだ。



・・・だが大して丁重にされず、おざなりに扱われていると分かれば怒るのが人である。そんな扱いをされたマルクトの者達がダアトを気に入らないと思うのは当然であろう。いくら訴えやら不満やらを口にした所でそれが聞き入れられなければどうしたところでそういった事になるのは明白だ。

しかしそんな気持ちを抱いたとしても最早オールドラントに残るのはキムラスカとダアトのみであり、マルクトは敗残国であり最早キムラスカの属国になってしまったのだ。そんな中でダアトに対して敵対行動を取ってしまえば、マルクトを支配下に置いたキムラスカが粛清に取り掛かりに来ることはまず間違いないだろう。そしてそうなればまたマルクトの人々は苦しむ事になり、以降はこれ以上人を減らせないということから大人しくならざるを得なくなるだろうが・・・その結果がマルクトより持ち込まれる病という結果になるだろうと孔明は見て、くのいち達に話をした。

確かに世界統一を果たしたキムラスカとその恩恵に預かり甘い蜜を吸うダアトは繁栄をすることだろう。しかしやはり虐げられ弾圧されてきたマルクトがもうキムラスカの一員だからと厚遇される事はないのは火を見るより明らかであったし、民の意識も負けたマルクトの人間を同じキムラスカの人間だなどと認めることなく差別を始めとした過激な行動を取っていただろう・・・そんな環境になったならキムラスカがろくに環境を整備せず劣悪な状態のままのマルクトで流行りだした病に犯された者がせめてもの復讐と、キムラスカにダアトへ特攻をかけにきてもおかしくはない。

そして預言の通りならその病はキムラスカだけでなくダアトも含み、オールドラント全土を巻き込む感染力の強い病だということになる・・・そしてそうなったならもう後は預言通りのオールドラントの最後になる以外に結末は訪れなかったであろう。しかしそんな病が流行ったとしても決してモース達は自分の過ちを認めなかっただろう事は明白である。誰かが預言をねじ曲げたからこんなことになった、自分達のせいではないと最期の時が来てもそう言い続ける形で・・・









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