軍師と女忍、未来を繋ぐ

・・・ダアトはローレライ教団の総本山という位置付けであり、預言を扱うことから食糧の輸入に関してはケセドニアとの関係から関税の値はキムラスカに比べて大いに引き下げられた物で行われていた。それもダアトが後ろ楯にいるのもあったが、ダアトの機嫌を損ねて妙な事態になるのを避けるためだ。

しかしエンゲーブが火に包まれたならいくらダアトに預言があるからといった所で、無い袖はいくら振ろうとしても振れない物だ。そんなことになったなら関税の値段を大幅に引き上げざるを得ないのはどうしようもないどころか、食糧が輸出されるだけで儲けものだと見るしか出来ないのは明白だ。何故なら食糧があることそのものがありがたいという考えになるためにだ。

そしてそうなればダアトの人々の生活が困窮するのは避けられなくなり、モースや預言保守派の者達も権限を行使して食糧を自分の元にだけでも安定して供給させようとした所で色々と厳しいと言わざるを得ないだろう。やってやれないことは無いだろうが、自分達だけが豊富な食糧を貪り手元に置くなどといったことをすれば食糧不足に苦しむ者達が良からぬ気持ちを抱いた目をモース達に向けないことなど無いだろう・・・その時には下手をすれば餓死者すら出てもおかしくない環境にあると考えたならだ。

・・・と言ってもこれはあくまでも想像に過ぎないためにこうなり得たかもしれないという予想でしかないが、預言の中身を振り返ればセントビナーには死体が高く積まれてグランコクマでピオニーが追い詰められて殺されるといった内容の預言が詠まれていたのだ。その預言からマルクトの人々の大多数がその戦争で死ぬことになるのは容易に想像がつく上、エンゲーブのみがそんな状況から被害も何もなしに逃れられるなどといった事など有り得る訳がなく・・・ダアトにもその影響が訪れ、思うような繁栄が訪れはしていなかっただろうというのが孔明達の考えであった。食糧もそうだが、ダアトへの不信感もマルクトの人間が抱くことでだ。



「そもそもの話として、グランコクマまで攻めこみピオニー陛下の首まで取ったという事態になるまでダアトがキムラスカを放置していたなんていうような事になれば、その時に生き残ったマルクトの方々はダアトの事など信じるに値しないというように考えるでしょうね。大義はキムラスカにありとダアトが手を出していたなら尚更です」
「手を出さないにしても、全く戦争を止める素振りもなかったんなら嫌でも考えますよね~。対外的には一応は止めたみたいに言いはしても、グランコクマが落とされるみたいな事態になる前ならピオニー陛下の性格的に降伏と自分の身柄を差し出すって言いそうですけど・・・」
「預言の内容に沿わせる為に難癖をつけてそんなことしないとなるのは予測が出来ますね。そしてピオニー陛下の首を取ってマルクトを征服したとなればキムラスカに対しては勿論ですが、のうのうと被害を避けるだけ避けておいてまたマルクトに来たダアトの人間など現地の人々は信じない・・・といった所になるんでしょうね。今更来たところで何になる、預言にこうなると詠まれていたなら何故自分達を助けなかったんだ・・・と」
そうして孔明にくのいちにイオンといった順でいかにマルクト側から見てダアトに対する怒りを抱き、不信の気持ちを抱くのかという予想を口にしていく。被害者の立場からしていかにダアトを信じられないという考えになるのかを。









.
34/40ページ
スキ