軍師と女忍、未来を繋ぐ

「・・・おっと、その辺りに関しては後にしましょう。私は貴女からの話をイオンに報告に行きます。貴女は船旅で疲れているでしょうから休憩して構いませんよ」
「私も行きますよ~。旦那様の事ですから明日明後日くらいは休みにしてくれるでしょうし、私の口から説明出来る事もあるでしょうし」
「そうですか・・・ではお言葉に甘えますので、行きましょう」
そんな会話をふと止めてイオンへの報告を切り出す孔明に、くのいちも笑顔で行くと切り出して二人は部屋を後にしていく。










「・・・成程、アッシュはそんな状態だということですか・・・」
「妻や少将達の受けた印象からまず余程こちらから挑発的な行動さえ取らなければ、マルクトやダアトに戦を仕掛けてくることはないだろうとのことです」
「丞相も話を聞いてそう感じましたか?」
「えぇ。余程の粗相なり迂闊な行動を取らなければ戦争とまではいかずとも、冷戦と言った状態にもなりにくいでしょう。ですから行儀よくさえしておけばダアトは今のままで大丈夫でしょうね」
「そうですか・・・そう聞けて僕も安心出来ます」
・・・それで導師の部屋に来て報告を終えた二人に対し、イオンはホッとしたというように微笑を浮かべる。
「安心していただくのは構いませんが、これからの事を考えるならまだ色々とやらねばならないことがあることは忘れないようにお願いします。特に貴方の場合は子どもを作るか否かは色々と重要になりますからね」
「歴代の導師の血脈を守るかどうかということなら聞いていますし、後三年後までに決めてほしい・・・ということなら分かっています。僕がそれを決めることにより、またダアトの行く末を決めるということも」
その表情を見て孔明が安穏とばかりは出来ないと口を挟むと、イオンもまた表情を引き締めて真剣に頷き返す。



・・・シンクもそうだがイオンは既に亡くなっている被験者の導師イオンのレプリカである。これはヴァンやモース達を騙すためには仕方なかった部分があるとはいえ、孔明達からして言えば自然の摂理にもとわない行為だったと思っている。

だからというだけではないがそんな被験者イオンのレプリカであるシンクやイオン、それに他のダアト式譜術を完全に使えるレプリカを作るようにと産み出されたレプリカ達に関して、出来る限り知識に愛情であったりを注いできたのだが・・・それでも元々は『導師イオン』という存在は五年も前にはとうに亡くなっているのだ。それはつまり、本来なら歴代で脈々と受け継がれてきたダアトの導師の血脈が途絶えたということになる。そして本来ならそこで導師の血脈は途絶えたとするのが自然の流れだったと孔明は考えている。

しかし今現在、ヴァン達の為だったとは言えイオンは存在している・・・その事から孔明は導師の血脈を是が非でも守ることもそうだが、歴代の導師の血脈でなければ導師になれないというような暗黙の了解を変えることも視野に入れるべきではないかと考えていた。無理に血脈を守ろうとしてきてそのツケが来たからヴァンにモースが『導師イオン』の代わりを造れるとつけこまれる形になり、フォミクリー技術を黙認する形になってしまったことを踏まえたのもあってだ。

ただ現在イオンは導師として立派にやってきてはいるし、本人もやる気があることは十二分に孔明も理解はしている。だが今はイオンがいて後々に子どもが出来たとしたなら、人々は歴代の導師のようにイオンの子どもを次代の導師とするように求めてくる可能性は非常に高いが・・・今はまだいいだろう。しかしいずれを考えるなら導師のシステムの保全も含めてどうするかを考えなければならないが、それを決めるには色々と難しいことがあるのも事実。その為、孔明は自分で全てを決めるのではなくイオンにもどうするべきかを考えるようにと告げた。









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