軍師と女忍、未来を繋ぐ

・・・そうして後に多少打ち合わせをして、孔明は六神将の面々に元の場所に戻るように言って退出してもらった。
「さて・・・一先ず今日の仕事は終わりになりますが、付いてきてくださいくのいち。アニスに話をしに行きたいたいと思います」
「あ、はい分かりました」
そうして二人きりになった所で孔明がアニスの元にと切り出したことに、くのいちもすぐに頷く。









・・・それで二人が向かった先は神託の盾の本部の中にある一室であるアニスの住む部屋だ。
「・・・そうですか、あの二人が・・・」
「おそらくもう意図的に貴女が会いに行かねばあの二人に会うことはもうないでしょう。ですので一応最後という形になりますが、貴女が会いに行きたいと言うなら会いに行くことは構いませんが・・・」
「いえ、それは大丈夫です」
「・・・よろしいのですね?前に会いに行くのは望ましくないとは言いましたが、今回を逃せば今生の別れになることになるかもしれないんですよ?」
そこでアニスは向かい合う形になった二人から話を聞いた上で問い掛けを孔明から向けられるのだが、迷う様子もなくいいとすぐに返す様子に真剣な面持ちで再度問い掛けなおされる。
「・・・あの二人の性格に考え方は分かっています。会えたら会えたででもそうですけど、会えなくてもあの二人は私にまたいつか会える時は来るとかっていうように楽観してるだろうって事は。そんな二人に対して一応は最後の別れみたいに挨拶をしたって、全くそんな気持ちを掬い取ってくれるとは思えませんし・・・もう何より、会う気になれないんです。結局は何も変わらないあの人達に変わってほしいなんて風に言ったって無駄なのは分かってますし、もうそれならそれでいっそ何も考えないままお義父さん達の言うままにしてこれからのダアトの為になって死んでいった方がいいだろうからって・・・」
「・・・成程、そういうことですか・・・」
それでアニスは自分の中の考えをまとめあげるように話をしていくのだが、割り切れてないようで割り切れているような心情的には複雑だというような気持ちがあるのは見てとれるその様子に、孔明はその気持ちを感じつつ一つ頷く。
「ではもうあの二人に関しては以降は話題に出さないようにしますが、それで構いませんか?」
「はい、大丈夫です。むしろもうそっちの方がこっちとしても気が楽になりますから」
「分かりました、そうします」
孔明はならとタトリン夫妻の話題についてを打ち切った方がいいかと聞くと、キッパリ返ってきた返答に了承すると頷いた。



・・・親と子の考えのすれ違いは世の中では珍しくはないし、それで親子共々不幸になることは多々ある。しかしどちらかが苦境にいるのにそれを苦とせず、どちらかだけが割りを食うようなことは中々に無いことではある。

しかし苦境に立たされて苦心していた子どもは手助けを受け、苦境を苦境と思わない・・・いや、苦境かどうかを考えることすら放棄している親を見捨てるに至った。

だがそれでも親は自らが見捨てられたという自覚はない上、そんなことに気付くことはこれから先も死ぬまでにないだろう。ただそうだと聞かされた所で効果などまず見込めはしないだろう・・・かつては子の必死な訴えを全く大したことだと思わないと、全てを笑って流してきた親達だ。また同じようにしてそうですかと深く考えることなく流してしまうだろう。

・・・だがもうそれも終わった。道を違えた親子はもう顔を合わせる事はない。親達はただ考えることなく生きていって死ぬだろう・・・子や手を差し伸べた者達から見放されていることにも気付かず、自分達は幸せなのだと思っていくまま・・・









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