軍師と女忍、未来を繋ぐ

・・・分かってはいたことではあるし、理解していたことである。だが目の前であんな姿を見せられてしまえば、否応なしに気分が良くないのは事実ではあった。

しかしそれを承知であの場に他の者達と共に場にいてもらったのは、二人だけを特別扱いする気はなかったためだ。これに関しては二人の性格的な事から自分達は丞相と関係があるからどうのこうのと言った権力を盾にするような言動はしないとは見てはいるが、そういった言動を警戒してのことではない。単純な話として二人を特別扱いする気もそうだが、以降に孔明が直接相対するようなことをする気はないということを示すためでもある。

この前までは気楽にと言うか直接会いに来るくらいにはタトリン夫妻は気安く孔明の元に来ていた。これはアニスに関係していて借金をどうにか出来ないかという相談を軽く出来ると見ていたからこそであるが、本来教団の人間として孔明は軽々しく会えないだけの地位にいるのだ。それを当人達は理解出来るかどうかはともかくとして、孔明はあぁしてもう気軽でいて直接会うことがないようにするための前段階にしたのだ。もし未来に二人が何かを孔明達に言ってくるにしても、他の者達と同じようにして特別扱いしないように門前払いをするのも当然というようにだ。

・・・もう関係性もそうだが、実質的に二人が自分達の元に来れないようにして終わらせる。その為に孔明は敢えてあのような形を取ったのだ。この事を後に聞いて良くない気分になるだろうアニスの気持ちを考えて、せめて自分達も少しは良くない気分を味わうべきだという考えもあってだ・・・


















・・・そのようにして微妙な気分にこそなったが孔明達が選択肢を提示して一週間が経ち、人々に土地の開墾の事についてとその人員の募集をすることについてを発表した。

まぁ流石にその発表の後にすぐ借金など関係ない人々の中から自分がと立候補してくる者はいなかったが、そんな影で借金をした者達が別の場所に集められてどうするかについてをくのいちが聞いてみたのだが・・・二人が予想した事は何も間違ってはおらず、一部はダアトを出ることを選ぶと言い出しはしたが残りのタトリン夫妻を含めた面々は揃って開墾の場に行くというように口にした。

その事にくのいちは表情を崩すことなくそれらの人々に関する手続きを取っていき、また一週間後までに準備を済ませてここに来るようにと言って解散という流れで終わりを告げた。



「・・・というわけでタトリン夫妻を含めた相当数の面々は開墾に向かうとのことです」
「ありがとうございました、くのいち」
・・・それでくのいちは後ろに六神将の面々をつける中で目の前の机に備え付けられた椅子に座る孔明に報告を終え、労いの言葉を受ける。
「・・・そういう訳ですのでシンクにアリエッタ。貴殿方は開墾に関する方々の護衛及び、着いてからの周囲の警戒の任についてください。範囲に関しては以前に打ち合わせをしているので分かりますね?」
「はい、問題ありません」
「アリエッタも問題ない、です」
「では次にリグレット。現状でのダアトの治安維持に関しては貴女の指揮で大丈夫ですね?」
「はっ、問題ありません。マルセルを始めとしてよく従ってくれる兵達もいますので、何かあればすぐに対処出来ます」
「そうですか・・・では最後にディスト。貴方には引き続き音素の影響を受けずに使える新しい譜業の研究をお願いしますが、何か入り用な物であったり成果が出れば報告をお願いします。特に成果に関しては後々のダアトの立場を決めることになり得ますので、そこは気を付けてください」
「はい、その時はすぐに報告に来ます」
そうして次々に孔明が指示を出していくのだが、四人は特に反発することもなく了承を返していった。各々が各々やるべきことを自覚しているのが分かるような意志の強さを滲ませる形で。









.
24/40ページ
スキ