軍師と女忍、未来を繋ぐ

・・・一応は孔明は考えてはいる。その開墾の為の時間の中で、もう預言など無くても別に生きていけるのではないかと考えるようになる可能性は全然有り得ると。これは単純に十年以上かかる者もいる時間を預言のない環境で過ごしていくことから、もう預言に頼らないでいいんじゃないかと思うようになる可能性があるからだ。いや、むしろそんな環境にいたのだからそうなる方が普通であると孔明は考えている。

だがタトリン夫妻を始めとした自分がない者達がそうならない可能性の方が高いと見ていた。預言が復活するなら待てばいい、そこに時間がかかるからと疑問を差し挟み考えを変える理由などどこにあるのか、自分達が借金を返しきれて外に出るようになった時には預言が詠まれる環境は復活しているだろう・・・と言ったように楽観的に考えた上で、思考を放棄するだろう。そうなり得ない可能性については都合よく見ず、考えない形でだ。

だが何年もの時が経ち預言の復活どころか最早ダアトでそんな気風の欠片も見えないとなれば、そんな人物達も流石に焦るというかどういうことなのかというようになるのは目に見えている。預言の復活はまだ出来ていないのかと。

だが理想・・・と言うにはあまりにも淡くてふんわりと望まれた物だが、それでも理想と現実の解離をそういった者達は次第に知っていくことになるだろう。預言の復活もそうだが、そう望む者達ももう表に姿を現すことはないということに。



・・・ただもしその時が来たとしても、タトリン夫妻のような者達がその時のダアトにとっての驚異になることはまず有り得はしないのは分かってはいる。何故ならあくまでその者達の本質は自分がなく、こうであったらいいなと思う程度で強く預言の復活の為に行動するんだというように一念発起するような人物達では決してないからだ。

その点ではまだ争い事やら預言復活を願う事に関しての火種にはなりはしないだろうし、行動も起こしはしないだろう。そして一応は預言復活をしてほしいと思いはしても大人しくしてはくれるだろうが・・・反面、ならどうやって活動したらいいのか分からないといったような考えをその者達が抱くのもまた容易に想像が出来た。

前は預言とそれを詠むローレライ教団で、今は借金を返すためにわざわざ働く場と借金をしないように孔明が動いてくれた・・・ならそこから後はどうすればいいのか、となることだろう。自分達がどうすればいいか、誰か導いてくれないかと。

これは教団の体質もあるが、やはり預言があることにより思考放棄をする者達がいるのが普通だという状態であったことが原因である。自分達はただ教団や預言の言う通りに過ごせばそれで幸せになるのだからと、その言葉を疑うこともなくだ。



・・・こういった者達の変心を願う為にどうにかならないかと孔明も一時期考えたことはあった。人の姿としてあまりにも歪であり、誰かの言うなりにしか動けないことは。

だがこんな人物達を変えるには今までの教団や預言に頼り続けない方がいいと思えるほどの強い衝撃を伴う出来事・・・仮定としてヴァン達の計画がある程度到達したとして、ダアトで過ごすその者達にも色々と考えざるを得ないほどの犠牲が出なければまず無理だろうと結論が出た。ヴァン達の計画が進めば犠牲はどれだけ出るのか予想が難しかったのもある上、孔明もそんな計画は犠牲を出来る限り少なくして未然に防ぐようにしないといけないと考えてだ。

だがだからこそそんな者達の心を劇的に変えるのは難しいという状態になってしまい、自分達で物事を考えて動けるようにはならないだろうからどう動けばいいか分からないという状態になることもまた想像はついた。

そしてそんな人物達なりに迷った末にどう行動するのかと言えば・・・十中八九再び孔明を頼ってどうすればいいのかだったりまた開墾に参加させてくれないかと聞いてくるというものであり、孔明もならと頷くという結果になるだろう・・・最早救いようもない者達の為にせめてという形でだ。









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