軍師と女忍、未来を繋ぐ

ただ実際の所は預言士のような者達に比べれば、タトリン夫妻のような者達はそういった環境に入っても根はそうそうは上げないだろうと孔明は見ているが・・・だからこそそこに問題があるとも見ている。

タトリン夫妻達のような者達からすればダアトやローレライ教団からこうしてほしいと言われたなら、余程酷い物でなければ従うべき物であるべきだと考えるだろう。その者達からすれば教団の意志に従うこと・・・もっと言うならいずれ復活すると思っている預言の為にもダアトから離れたくないと。

そしてそういった気持ちから先の選択肢の中から二番目に関しては、相当の理由がなければまず選ぶ者はいないだろう・・・何せ条件の中にダアトに戻ることは実質的に許されないと言われたような物なのだ。そんなことを易々選択することは敬虔なローレライ教団の信者としては出来ないのは目に見えている。

その上で一番目と三番目の選択肢のどちらかではなく三番目を選ぶのかというかに関しては、単純に比較してどちらが借金を返すのがやり易いかもそうだが孔明側から見てどうしてほしいかと言うのを伝えたからである。厳しい言い方はしたがあれはほとんどの者達にとって紛れもない事実であったし、ちゃんと返せるように孔明がちゃんと考えたという形でお膳立てまでしたのだ。これでローレライ教団の信者として、また借金を返すことを切実に望まれているということから一番目の選択肢は必然的に除外されるというわけである。



・・・ただ場にいた面々が気付いたかどうかはさておきとして、孔明は三番目の選択肢を選ぶようにと誘導するように話し方を選んで話をしていた。そして三番目の選択肢を選んでほしいというのは嘘ではないどころか、切実にそうしてほしいと願っている。一応孔明としても悪い人物達ではないことを知っているのもあってだ。

しかし一番目の選択肢を選ぶようなこともそうだが、話の中で出したような身近な誰かに金を返すのを手伝ってもらうようなことをされるのは是が非でも止めてほしい事であった。いくら悪人ではないからと言った所でやっていいことと悪いことには限度はある上、誰かに手伝ってもらって借金を返した所でどうなるかは想像に難くはない。また借金が出来るようになると見るのもそうであるが、結局は借金することに関して何の解決にもならないことは。

だからこそ孔明は開墾の場にそれらの者達を送り込み、実質的に隔離することにしたのだ。借金を出来ないどころか金を手元にもらえない環境に送り込み、迂闊に外部との接触すら出来ないようにするために。

尚、こういった狙いに関しては一切口には出してはいないが孔明が口にしたことについては嘘偽りは一つたりとてない。借金を返せるだけの金を徴収出来たなら、それを渡すようにするということは。だがその者達は考えていないだろう・・・どう少なく見ても数年単位で借金返済に時間がかかり、その開墾の場から借金返済が出来た後に出るようになる時には、最早ダアトは預言の詠まれていた頃とは比べるまでもなく変わりきっているだろうことに。



・・・一年や二年ではそこまで大幅には変わりはしないだろうが、十年以上かかって孔明の思惑通りに進めば大幅にダアトは変わることになるだろう。そしてその時にローレライ教団の信者として預言の復活を望みつつ活動していた者達は、キムラスカやマルクトも含めて預言を必要としない変わってしまったダアトとローレライ教団にどう思うか・・・は重要ではない。重要なのはそこからの生き方だ。









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