軍師と女忍、未来を繋ぐ

・・・現在のダアトでは人自体は少なくなりはしたが、上層部に関しては預言関連の復活を目指さないということを共通に持ちつつモチベーションは高い面々が揃っていて、各々の仕事に取り組んでいる。しかし教団の下の方の人間は元預言士も含めてモチベーションが下がっている者も多いことを孔明は配下の神託の盾からの報告を受けて認知していた。

これはある程度仕方無いと言えば仕方無い。預言士については前に説明はしたが、ダアトは預言を詠むことで成り立ってきたことから元々あった仕事が無くなった人もいる。ただこれはモースにヴァン達を処刑したことに加えて、預言を詠まないと宣言したローレライ教団を改善するにはあまりにも時間が少なすぎた上に、急ぎすぎては却って事を仕損じる可能性が高いという面もあったのだ。

故にそういった人物達への対応としてしばらく仮の職に就けるなどしてきたが、あくまで仮は仮であるし現在のダアトは人を余らせていられる程に余裕はない。ケセドニアとの関係は条件の緩和によりまだ続いてはいるが、その条件の緩和により資金の少ない今の状況では役立たずの無駄飯食らいなど置けるはずもないのだ。

だからこそそんな人物達をどうにか働かせることもそうだが、ダアトから出るかどうかの選択を視野に入れさせることにタトリン夫妻のような人々を隔離することも含めて開墾の場に連れていくことを孔明は考えた。



・・・ただそういったように聞くなら人聞きは悪くは思うかもしれないが、孔明としては働く環境については別段過酷であったり理不尽な要求をするつもりは一切ない。衣食住については完備させるのは間違いないし、神託の盾にアリエッタの友達達などに周囲を見張らせて安全にすることもそうだが労働時間も普通の仕事と同様にするのは確定している。その辺りに関しても手抜かりはない。

だがそんな環境でもこんな重労働だったり閉鎖的な所は嫌だなどと言い出す輩は出てくるだろうと孔明は見ている。これまでのローレライ教団は肉体労働など神託の盾くらいしかやるものはほとんどおらず、日中は休憩時間を除いて農耕に勤しむなど真逆の生活にも程があると根を上げる形でだ。

まぁ一応孔明は希望していない者を無理にその開墾の方につけるつもりはない。やりたくないという者に無理強いをしてもろくな結果にならないというのが大半であるし、それならと別の職をあてがうことも出来ることは出来るが・・・それでも尚こんな事はしたくないとあらゆる仕事を放棄し、働くことを拒否するようであり尚且つ問題行動を起こすのであれば最終的な手段を使うことも辞さない考えは孔明の中にある。

先にも言ったが、今のダアトに役立たずの無駄飯食らい・・・それも簡単な仕事に就くことすら拒否するような者を養う余裕もない上、預言の復活をさせることもしないから預言士のような前の教団にあったような仕事はもう出来ることはない。しかしそうして追いこまれた者がこんなこと出来るかと行動に起こしたなら、孔明はすぐさま鎮圧に動くことだろう。人々にとって大義名分を共にしてだ。



・・・ただ本来の穏やかで理知的な性分の孔明は、こんな策を用いるようなことはしない人間である。しかし今のダアトから危険分子はある程度去ってはいても、まだそれらは完全にどうにか出来ている訳ではない上に言葉でどうにか出来るような輩ではない者が行動を起こしたなら、それを利用するくらいでなければダアトの改善活動は成り立たない程に厳しい物があるのだ。

それだからこそそういった人物達に仕事を与える形で大人しくなるならそれで良しとし、駄目なら駄目で対処するという姿勢を取るという方がいいと考えたのだ。振るいにかけて、どうなのかと見定めた方が。

そしてそれはタトリン夫妻達のような者達にも当てはまることなのである・・・









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