軍師と女忍、未来を繋ぐ

「ただ、早めにアニスを導師守護役から外しておいて正解だったといった所でしょうか。あぁしてアニスに平然と会いに来た姿から、やはり自分達は今も養子に出しても親子なんだという考えなのは確認出来ましたしね」
しかし孔明は悪いことばかりでもないと、アニスの事を口にする・・・もう導師守護役から別の部署に移ったアニスだが、今も導師守護役として活動していたなら確実にアニスに会いにイオンの元に行っていただろうと。
「・・・少しイオンの元に向かいますか。アニスの事に関して事態が動く可能性が出てきましたからね・・・」
だからこそ孔明は椅子から立ち上がり、対策を取るためにイオンの元へ向かう・・・これから先、タトリン夫妻が行動を起こすだろうと見越して・・・










・・・そうして表面上でも裏でも事態が進む中で時間もまた進み、色々とありつつもやはりダアトにはいられないと考えて移住を希望する人々が集まった所で、孔明達はそういった人々に簡易的にどちらに行きたいのかにどう働きたいのかといったアンケートを取った上で、行きたい行き先にどれくらいの人数を送りますといった手紙を送った。

尚その際に少ない人数ながらも働かなければならないのかと、それならダアトを出ないといった者達もいた・・・この辺りは預言を詠む事が主な役割であり、それ以外に特に仕事といったことをしてなかったりやる気の見えなかった預言士がほとんどだった。

ただこれは元々がいけなかったと言えよう・・・今夜の献立は何にするかと考えるより預言に従った方が早いと日常の些細な事にまで預言に頼り思考を放棄する人々が多数いる中、預言を詠める預言士は預言を詠むだけで仕事が成り立つレベルに稼げるだけでなく敬意までもを向けられてきた。

こんな風な形で預言を詠むことで崇められる形で特に肉体労働的な意味で苦労することなく動いてきた預言士達が預言を詠めなくなり、まともな形で働くことに難色を示すのはある意味当然と言えたが・・・元預言士を含めてそう言った人物達が出てくるのは孔明は想定済みであり、解決の為に行動予定なのである。









・・・そんな風にダアトから人を送り出し、人が少なくなったのを残った人々が感じながら時間は進むのだが・・・そこでまた孔明はあの二人の来訪を受けていた。



「・・・アニスに話は出来ないんですか、丞相?」
「貴殿方が単に会うだけなら問題はないと言いたいところでした・・・ですが前に貴殿方からアニスを引き取ることにした時に言わせていただいた筈です。養子という形とは言えもうアニスは正式に私の子どもということになり、貴殿方は血縁としての繋がりは消えずとももう立場的に貴殿方は親ではありませんし、ましてや貴殿方の借金返済に付き合わなければならない理由もありません・・・私の言っていることが分かるのでしたらお引き取りをお願いする上で、アニスに直接話をしに行くのも借金をするにしてもお金を貸してくれる方々に自分以外にもアニスがいると彼女を引き合いに出したりすることも止めてください・・・貴殿方の借金は貴殿方の責任で終わらせるべきであり、もう彼女は貴殿方の子どもではないのですから貴殿方の責任に付き合う義理はないのですからね」
「はい、分かりました。では失礼します」
・・・前と同じような構図で話をする孔明だが、目の前のタトリン夫妻から今回の来訪の目的として話された自身らの借金返済に関することに対し、アニスを巻き込むことは望まれないと口調は丁寧ながらも強く譲る気はないというよう言い切るとタトリン夫妻はすぐに頷いて部屋から退出をしていった。アニスに協力を得られなかったことを残念に思うようでもなく、ましてや反省して納得した様子でもなくただそうなのかと鵜呑みにするように。









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