軍師と女忍、未来を繋ぐ

・・・そうして翌日にくのいち達がダアトを出て、ダアトに残った孔明はしばしの時間を貯まった書類整理であったり後々の為の準備に動いていった。

そんな風に動いていく中で二週間の時が経ち、移住に関して準備をしていることに各国もそれを受け入れてくれる心構えがあり、移住を考えている者達にはその為の援助をする用意があると発表をした。そして随時ダアトを出たいという者が集まったなら、各国と連絡を取り合いダアトから送り出すようにすると。

そんな発表にダアトの人々は大いに揺れることになった・・・預言を詠まなくなると発表したダアトから人がいなくなることを想定した上で、そうしたいと思う人達の為に尽力するつもりで導師達が動くつもりでいることは分かる。そしてこれからの生活において預言が詠まれないと言われて、どう生きていいか分からないだったりそんなダアトに居られないという人が出ることも分かる・・・だがそれらを踏まえてもダアトにいたいと思う気持ちがあるのも事実であり、考えとしては理解は出来ても簡単に故郷であったり憧れとして移住してきたダアトを離れるという結論に至れないのもまた事実だと。

・・・そういったどちらを選ぶかの選択に揺れる人々が日々ダアトのどこかしらで話をしている中、孔明はある二人の人物の来訪を受けていた。









「・・・アニスは導師守護役ではなくなったというんですか?」
「えぇ。少し導師守護役の体制を見直すと共に彼女の能力から別の仕事をあてがう方がいいと考えた結果として、現在はそちらの方に配置換えをさせていただきました。ですのでもうアニスは導師守護役でも導師の側付きでもありませんし、導師の元に行っても彼女のことは知らないとおっしゃると思いますししばらくは新しい仕事に慣れる為にも表に出てくることはありませんよ」
「そうなんですか」
・・・孔明にあてがわれた丞相としての部屋に来たのは、アニスの元の両親であるタトリン夫妻。机に備え付けられた椅子に座る孔明は目の前に立つ両親にアニスについてを答えると、二人揃ってのほほんとしたよう・・・それでいて感情の起伏がほとんど感じられないような人として矛盾しているように思わせる様子で頷く。
「・・・それで貴殿方はアニスと何か話したかったのですか?」
「アニスちゃんがダアトから出るのかなと気になったのですが、ダアトから出るならその前にお話をしたいなと思ったんです」
「ただそういうことならまたダアトでも会えるでしょうから、また会えた時に話をすればいいかと思いましたから大丈夫です」
「・・・ということは貴殿方はダアトから離れるつもりはないということですか」
「はい。預言が詠まれなくなる事は残念ではありますが、やはり我々の故郷はダアトですから」
「それに時間が経てば新たな預言が詠まれるようになるという話も出ていますから、その時が来るまで私達は待ちたいと思っています」
「・・・そうですか・・・では用事が済まれたのでしたら、部屋を出られてください。まだ私は仕事がありますからね」
「はい、では失礼します」
そんな二人にアニスについてを聞きたかったのかから話は発展し、二人は至って気楽そうに大丈夫だろうと漏らす様子に孔明は退出を願うと、聞きたいことを聞き終わった二人は感情の起伏をほとんど現さないままにすぐに頭を下げて部屋を後にしていった。



「・・・新たな預言、ですか・・・大方預言がそんなものだと信じたくないという方々から出た第七譜石に詠まれた預言を乗り越えたのなら、今度こそ繁栄の為の預言が出てくるといった勝手な推測辺りを真に受けるばかりかそれが真実だと思っているのでしょうね。結局は預言はずっと詠まれ続けていくのだからと・・・」
それで一人残った孔明は出入り口の扉の方を見ながら、呆れをそっと口にする・・・事実を信じたくないがあまりに希望的な気持ちをさも真実のように言い出す輩は出てきやすいものだが、そんな甘言を真実だというように疑念を全く挟まず純粋に信じているだろう様子だったために。









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