軍師と女忍、未来を繋ぐ

「と言うわけですので、シンクとリグレットは明日に妻と一緒に兵を率いてダアトからユリアシティに向かってください。そしてそのままユリアシティにしばらく滞在をお願いします」
「しばらく滞在する、ですか?」
「えぇ。外殻大地が魔界に降りてからまだあまり時間は経っていませんからまだユリアシティの場所は知れ渡りきれてはいないでしょうが、これからは船が行き交うことによってユリアシティの存在に位置は船乗りの方々に知られることになります。ただ我々が様々に発表してきた事により、人々にとってユリアシティへの印象はあまり良くない事になっているでしょう。ですのでしばらくは二人を始めとして神託の盾が在籍することにより、ユリアシティの方々を庇護下に置いて助けるようにします。人々の反感の念を行動に移させない為にもです」
「・・・それだけ、ですか?」
「勿論ユリアシティの方々を単に気遣ってだけではありません。むしろ彼らを監視下に置くこと及び、恩を売ることの方が目的になります。特にしばらくの間を監視下に置いておく事は大事です・・・まだ市長はともかくとしても、他の住民の方々が預言を詠むのを放棄しなければならないことに加えて、対策がなかったら預言大事の一念でどれだけ犠牲を出してきたのだと迫害を受けることから預言を復活させるべきだとの運動を起こしかねませんからね。そういった後の危険になりかねないことを避けるためにも、二人や神託の盾にユリアシティへの滞在をお願いしたいんですよ」
「・・・そう、なんですか・・・」
そうして続けてユリアシティへの滞在も口にする孔明にアリエッタがどうしてなのかと首を傾げながら聞いてきた為、そうした方がいい理由を話していくと感激したような表情を見せホワリとした声を漏らす。言っている全てを理解するにはまだ育ちもあって難しいアリエッタだが、それでも孔明がどれだけ考えを巡らせているかは感じ取れたがために。
「ただそうとなれば、しばらくダアトの守りは薄くなりますが・・・」
「現状しばらくの間はダアトで事を為そうと動こうとする者は現れないでしょう。預言復活の為の行動を起こしたいと思う方々もおられるでしょうが、流石に時期が時期なだけに一朝一夕に事を為せるはずがありません。もし仮にそういった方々が決起して行動を起こすにしても同士を集めるであったり水面下での準備に時間をかけると思われますが、その頃には余程でなければユリアシティも安定してリグレット達も帰ってこれるような状態になっているでしょうし、移住を希望する方々がダアトから出ていくとなればそういった方々が行動を十全に行えるような状態になるとは思えません。それにキムラスカもマルクトもケセドニアもダアトへわざわざ兵を差し向けるような事は余程の事態でなければまずないでしょうから、基本的にはそこまで仰々しい警戒に心配はいらないでしょうね」
「成程、そういうことですか」
しかしディストが兵力について不安だと漏らすのだが、孔明が平然とまず問題ないと返していくその根拠に納得だと頷く。リアルに推測していく未来の中身に、まずしばらくはそこまで問題は起こらないだろうと。
「まぁ問題としてはその移住について発表する時期なんですが、これは二週間くらい間を取った後に発表することにします。明日あさってと言った時間に発表したとなれば急ぎすぎだと言われるでしょうし、人々もすぐにダアトから離れたいなどと思わないでしょう。ですので決起しかねない方々への牽制も含めてその事を発表し、そこから少し人々に考える時間を設けるようにした上で移住に関してを本格的に押し進めることにします。そこからが色々と難しい時期になりますが、ここを越えればダアトの安定にも繋がるでしょうから協力をお願いしますね」
「はい、喜んで」
「アリエッタ頑張る、です」
その上で人々の移住についてを話してよろしくと口にする孔明に、ディストとアリエッタは迷う様子もなく笑顔で了承を返した。孔明の考えたようになるように力を尽くすと。









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