軍師と女忍、未来を繋ぐ

「・・・話が長くなりましたが、我々は今後そのように動いていきたいと思っています。ただそうして動く事とローレライを音譜帯に送り届ける前にやらなければならないことがあります・・・それは、大詠師と謡将の配下を裁くという事です」
‘‘‘‘っ!’’’’
「ムガッ!?」
・・・そして今回の最もな目的であるモース達の裁きについてをイオンが真剣な様子になって切り出し、観衆が一斉に息を飲む中でモースは予想していなかったとばかりのようにくぐもった音を盛大に漏らした。
「・・・大詠師モース。貴方の行動の数々は預言は守られるべきという従来のローレライ教団における教義を果たそうとするという意味だけで捉えるなら、信者の鑑と呼べるような物であったのかもしれません。ですが貴方の引き起こした行動の数々は、預言に詠まれていたならそうすればいいと無条件に許せると言えるものではありません。むしろ預言であったならばこそ、本当にそれを実行すべきなのかと協議するべきだったでしょう・・・そのように預言の達成だけを目標にしたために、数々の悲劇が生まれてきた上で謡将達のような存在が生まれて動いてきたのですからね」
「ムグッ・・・!」
‘‘‘‘・・・’’’’
そんなモースへ責めるような視線と共に預言を守るだけしか考えなかった事の是非をイオンが口にすると、分かりやすく困ったような音を漏らして身をよじるモースの姿に観衆の目は揃って冷めたような目を向けていた・・・確かに教団の人間としては大詠師モースの存在は預言保守派と改革派関係無く尊敬される存在ではあるが、人への情だったり命を全く気にせずに単純に預言だけを求めてきたのかが今の反応で分かったために。
「・・・皆さんも今の反応で大詠師の考えや人となりが分かったことかと思います。本来ここで大詠師に裁判としての形を取るためにも申し開きなどの為に発言させるべきでしょうが、今彼に発言をさせるようなことをしても自分の言い分は間違いではないし預言の中身はもっと別にあるのだというような中身だというように言うことでしょう・・・そのような言い分で今までの事を許すわけにはいきません。そして彼についての処分に関しては単なる降格処分で済ませるような物には到底出来ません・・・ハッキリ言いますが、最早死罪にしなければ収まりがつかないというレベルです」
「ムッ!?」
‘‘‘‘・・・’’’’
イオンは観衆がそんな反応をしている中でモースは死罪でなければ収まりがつかないレベルにあると言い、モースは信じられないといったように目を見開くのだが観衆は意外だといったような様子などなく、むしろ納得といった様子を浮かべている。
「・・・皆様の中には大詠師を慕われている方々もおられるかもしれません。ですがそのような方々がいるからということで死罪になり得るだけの事をしているのに、判決を甘くするということは出来ません。そして後日に改めて裁判を行うにしても、大詠師の信望者が現れて彼の救助にかかりに来る可能性は否定出来ません。もしそうなったなら成功した場合、そして預言通りにしようと考え動かれた場合は先程に言ったようなダアトの危険に繋がりかねません・・・そういった危険性を考えた場合、あまり彼の裁判の為に長い時間をかけたくはありませんし牢に入れたままでは何かあることは決して否定は出来ないでしょう・・・ですので後の禍根を絶つためにも、今この場で大詠師に謡将達の処刑を執り行いたいと思います」
「ガッ!!?」
そしてこれが本題だというようにイオンは前置きを置いた上で切り出し、モースはたまらずに猿ぐつわがある状態でも分かるほどに顔色を青くした・・・もう今から殺すのだという宣言がされたことに。









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