時を経た変化

理由としてはやはりナタリアが政治に関わることのリスクにある・・・再三言うような形になるが、やる気だけなら確かにナタリアには誰よりもあるのだ。しかし歳を取ったとしてもナタリアが自分の考え以外を易々受け入れられるような思考回路を身に付けられるなど、誰も考えはしないだろう。

もし子どもを産むのも年齢的に厳しくなってきたなら、ナタリアももういい頃合いだと子どもを産む事に関してを止めてキムラスカの公務を広範囲で取り掛かろうとしたところで、年月により公務に関われない時間が増えたナタリアがうまく仕事をこなせる確率は高くはないのは目に見えている。まぁインゴベルトやその意志を聞いてきた者達がまかり間違ってもナタリアが調子づく事になるような展開にすることはないよう、手を尽くすのもあるだろうがだ。

そうなれば当然というか二人の子どもが成長してきたなら、いずれは王座を譲らなければならない時が近付いてくるだろう。しかし大人しくなって妥当か無難な政治を行う可能性の高いアッシュならともかく、子どもを産む機会に埋もれていて結果の出せなかったナタリアがその時に政治に関わる権利は与えられるとは思えないというか・・・与えないようにという計算になっていることだろう。大義名分を作るという意味でもだ。

まぁ流石にナタリアに世話役をつけるだとか身の回りの事について不便がないようにだとか、そんな気遣いまではしなくなることはないだろうが、あくまでもそれは前女王に対しての最低限の対応でしかないだろう。むしろそれまでやらなくなったら女王とはなんなのかという話になるからだ。



・・・勿論ナタリアは不平不満を大いに露にし、様々な事を言い出してくるだろう。立場的には前女王になったとは言え、このナタリアに対して何て事をと。だがいくら不平不満を口にしたところで、そこまで来てしまえばもうナタリアに関しては問題ではない・・・言ってしまえばナタリアが不満を言えるような状態にないからだ。

今のアッシュならナタリアを絶対に擁護するとは限らないであろうどころか、ナタリアの裏の事実・・・本当のナタリアは既に死んでいる事を今更という形ででも流石に明かされたくないことだろう。

それに周りの臣下達もそこまでの年齢になって落ち着くどころか、言い方は悪くとも老いてますます盛んな状態になられても迷惑でしかないだろう。その時になればどんなに若く二人が王位を譲った所で四十は確実に行っていて、かなり遅い時になったとしたなら五十という年齢に差し掛かっている・・・今のインゴベルトや公爵でも五十を越えて現役でやっているが、それはあくまでも代わりがいないからである。

代わりがいるなら余程の訳ありでなければ後進に先を謙るのが当然であり、無駄に後を譲ったはずの存在がでしゃばった所で歓迎されないのは目に見えている。むしろ邪魔者扱いにしかならない・・・ナタリアの性質や能力もあってだ。



・・・そういった理由から、ナタリアは自分の子ども達に後を任せるというようにして引いてくださいと言ったように言われることだろう。ただそれらをダイレクトに言ってしまえばナタリアが激昂することは目に見えているので、オブラートに包んで伝える形でだ。

しかしナタリアはオブラートに包まれた物の中身というか、気を使われてオブラートに包まれた言い方をされたという考えすら浮かばないだろう。気を使われ気を使わせることが平常の状態で過ごしてきたナタリアは、そんな些細な機微が含まれていることなど考えはしないのだ。

だからナタリアはまず不満を口にするだろうが、そうなれば終わりが近付くことになるだろう・・・自由に発言や行動が出来るし、したいと思うような立場にいられることの終わりが。









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