時を経た変化

「どうもっす」
「どうも奥方。どうでしたか、インゴベルト陛下のお話は?」
「まぁ大体予想通りの反応でしたね。三年前にバチカルに戻って戸惑ったままのあの状態から激しさが抜け落ちたままこの三年を過ごしてたとファブレの家で様子を見ていた公爵が時折報告していたようで、時たま呼び出したりすることから直に会うことがあってその時ももう全くあの激しさは片鱗でも陛下には見えなかったとのことです」
「・・・そうなのですか・・・」
そうして変装を解いたくのいちにどうかとフリングスは聞くのだが、別段問題はなかったといった旨の答えに怪訝そうな反応を浮かべる。
「ん~、少将がそんな反応になるのも無理は無いですけどこっちとしちゃ旦那様の予測通りだったんですよ」
「・・・と、言うと?」
「ほら、前はどんな風に言ったってルークの事を罵倒とか怒るようにっていうのはやめられなかったじゃないですか。まぁそんな風だったからこっちとしても何もなかったならルークが死んだとか伝えられても平気でルークを罵倒したり何らかの言い訳に口にしたら態度に出してただろうとは思いますけど、それもこの三年で全く無かったそうなんです。けどその代わりバチカルに戻って結構時間が経つまではあの戸惑ったまま・・・これが何を指すか、少将は分かりますか?」
「・・・いえ、私には・・・」
くのいちはそんなアッシュについて孔明の予測通りとしつつ何故今のようになったか分かるかを問うと、フリングスは少し考えて難しそうにやんわりと首を横に振る。
「んじゃ旦那様の推測について教えますけど、前に抜き取られた音素の補填に関してディストが例えに出した痛みに関することって覚えてます?」
「・・・まぁ大体は」
「それなら説明を続けますけど、旦那様はその例えを聞いた上であのアッシュの様子からどういった精神状態になっているかを考えたらしいんですけど・・・その中で出た一番可能性が高い推測っていうのが、ルークを痛みの理由として痛いのを誤魔化す為にあぁいった風になっていたのに音素の補填があって今まで感じてた痛みが無くなったと同時に、ルークへの怒りも消えたってことに戸惑ったってことらしいんです」
「・・・えっと、何故そのようなことに・・・?」
ならとくのいちはその孔明の推測について答えを返すのだが、フリングスはいまいちピンと来てないといったように首を傾げる。
「これは謡将にルークが全部悪いんだみたいに洗脳紛いな感じで言われてたって部分もあると思うけど、その痛みに関してを怒りでアッシュは誤魔化そうとした。そして時間が経つにつれてそれが恒常化したけれど、痛みに関してを誤魔化すその怒りが常になると言うことは決して人の精神状態において正常な状態とは言えない・・・って言うのが旦那様の言葉なんですけど、それは分かりますか?」
「確か似たようなことは聞いたことはあります・・・人というのは怒りという感情は一瞬で現れるけれど、その実は怒りは長くは続かず、いいところで一分も持たないくらいしかピークがないといったようなことは・・・」
そんなフリングスにくのいちが孔明の言葉を口にしていき、そこで自身の聞いたことのある怒りについての知識を思い出すように口にしていく。
「そう、そこなんすよ。怒ることだけに限らず喜怒哀楽の感情って頂点のままではずっといられないで、そうなった時は後は緩やかに感情は収まっていくって話だってことなんすよ。通常の人間ってそこまで感情に起伏がないから、感情の頂点ってヤツに近くでもずっと居続けることが出来ないらしいんすけど・・・それはあくまで通常の人間に限った話で、異常にいる人間・・・つまりアッシュはそうじゃなかったってのが旦那様の言です」
そんなフリングスの言葉に頷きつつ、くのいちは真剣に感情の在り方についてを話していく。通常の人とは違った、アッシュの異常だった状態についてを。









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