時を経た変化

「心当たりがあるとするなら、旅の最後辺りにアッシュに起きた何らかの変化があったことからだろうが・・・やはりバチカルに向かって直接確かめる以外にはないか。考えるだけではどうにもならないからな・・・」
そうしてフリングスは実際に会ってみてから確かめることにしようと締め括る。心当たりはあっても、これは実際に会ってみなければ分からないと。









・・・そうして船にてケセドニアを経由してバチカルにまで辿り着いたフリングスは大いに歓迎を受けた後、城へと案内された。
そうして城内の一室に案内されたフリングスだが、しばらくした後に控え目なノック音が響き扉が開かれた。
「失礼します、フリングス将軍」
「貴方は、トリトハイム詠師・・・と言うことは貴方がダアトの代表でこちらに来られたのですね」
「そうなりますが、中に入ってもよろしいでしょうか?」
「えぇ、どうぞ」
そこにいたのはトリトハイムと教団の法衣を着てフードを目深に被ったお供で、挨拶もそこそこに中に入りたいという望みにフリングスは快く中に入るように手を差し出す。そうして二人が部屋の中に入り、扉が閉められるのだが・・・
「にゃはん♪お久しぶりですね~、少将♪」
‘ボンッ’
「えっ!?・・・あ、貴女は丞相の奥方!?」
・・・そこで男から出るにはあまりにもおかしな女性の声がトリトハイムから出たのだが、次の瞬間にそのトリトハイムを白い煙が包んだかと思えばその煙の中にいたのはトリトハイムではなくくのいちで、フリングスはたまらず驚きに目を見開いた。
「どうやら驚かれたようですね、少将」
「あ、貴方はディスト・・・」
更にすぐに供の者がフードを取ったその顔に、驚きが尾を引いたままにフリングスはディストの顔がそこにあったということを確認する。
「あはは~、いきなり騙すようなことをしてすみません。でもちょっと私達が姿を隠さずにここに来ると、もしも今回の主役が癇癪を起こしたなら面倒だって旦那様の危惧から変装してバチカルに向かってくれって言われたんです」
「変装に主役の癇癪・・・と言うことは貴女方はあの方の様子を直に見るようにと、丞相から言われたのですね。わざわざ他国の我々を招待するということは、何らかの理由からあの方をその目に晒していいと思えることがあったからその理由を探るためにと」
「あったり~。と言っても流石に旦那様に私達が姿を見せたらどうなるか分からないってことでトリトハイムさんの姿を借りたんす。あの人私達と行動を共にしてなかなったから、印象は悪くないだろうってことで」
「成程、そういうことですか」
くのいちはドッキリ成功とばかりに笑顔を見せつつわざわざ変装をした理由について言葉にしていき、フリングスもそういうことかと納得する。
「・・・それで、彼を連れてきた理由は・・・」
「単純に彼がどういう状態かを確認するためです。何かがあったにしても、彼の状態についてを見れるのは私くらいしかいませんからね。ですから遠目で確認もそうですが、あわよくば陛下達とだけ謁見出来ればこの三年ほどの時間はどうだったのか聞ければと思って付いてきたんですよ」
「そうなんですか・・・」
それでディストに視線を向け何故二人でとくのいちに聞くが、当人がその理由を語ったことにまた納得する。確かに役割的にもディスト以外に出来ることではないと。









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