時を経た変化

・・・旅をしている最中、アッシュとナタリアが想いあっているような様子はフリングスは何度も見てきた。だが想いあっている筈なのに、性的な関係を持ったかどうかに関してはハッキリないと言えるとフリングスは見ていた。

これはアッシュがナタリアと距離を取ろうとしていたのもあるが、年相応に性的な欲求というか関係を求める以前にそもそもそんな欲求があるのかどうかもそうだが知識があるかどうかも怪しいレベルにあるとも。

勿論王族として、貴族として育てられた二人が全くそういった知識を身に付けないように敢えて避けられていたということは有り得ないとフリングスは見ている。むしろ性的な知識に関しては様々な意味で必要になる物だ。それは子どもを作る行動の際に侍従などの存在がないと作れないなどというような情けないことや、下手に肌を第三者に見せて妙な間違いが起こるのを避けるといったこともあるが、性犯罪の意味というものを上の立場にいる物として理解するためというのもまた大きい。

まぁナタリアがそういった事が起きた時に現場に行くことや被害者に会うことは立場上はなかったが、アッシュは神託の盾として動いていたことからそういったことは実際に起きうることだと知ってはいることだろう。見たことはなくとも、決してその現場が心地好くないものだということも。



・・・性的な行動や欲求自体は人として持つことは当然とは言える。そして王族として生まれた・・・ナタリアに関しては育てられたと言うべきだが、それらの行為をやりたくないからそうしないで行うことを避けることは望まれない。何故ならそれは後の一族を残すための子孫を作ることを拒否することになるからだ。

貴族や王族としての体面や面子を守ることにそういった面々は執心していて、子ども一人作れないと言うことは情けない人物と見られることになる。どうしても子どもが出来ない場合は養子を取るなりすることも出来ない訳ではないが、あくまでそういったことは最終的な手段であるし、王族の血という物を維持するには王族の血を引いている者以外が養子になって跡を継ぐなど望まれる事ではない。

故にキムラスカの王族の血を守るためにはナタリアは実際の事情があることを差し引いて考えるならアッシュが子どもを作る以外にはないが、本来年相応の経験に知識を経ているなら・・・そして本当にナタリアを愛しているなら、様々な事情があったからなどというのは考慮しても性的な目を向けていたり関係を求めていても全くおかしくはなかった。

無論性別の違いに裏事情があるからとは言え、ナタリアからそういったことを切り出しても別におかしなことではない。むしろ言い方はともかくとしてもハニートラップみたいなやり方ででも関係を持った方が、アッシュとしてはむしろ区切りに決心がついたことだろう。自分がナタリアを抱いたのだから、ちゃんとした形で責任を取るべきだと。



・・・しかしそういった手段に関しては清廉であろうというように考え行動していたナタリアが思い付くとは思えない上、聞いていたら聞いていたででむしろ反発したことだろう。そんな手段など王族として、愛し合う者達の間でやることとして望ましいことではないと。

潔癖であろうとして、そういたいという考えを持つことが間違いという訳ではない。しかしそんな考えをずっと持ち続ける・・・フリングスが危惧するような結婚してからも性交渉に関してを避けるようなことは、決していい兆候と呼べるものではないのだ。一回そういったことをすれば絶対にそうなるとは限らない上、子どもが一人生まれることになればもう後はそんなことはしなくていい・・・そう思われても今のキムラスカの王族事情を考えれば、一人だけではあまりにも心もとないが故に。

だがフリングスの知る限りのアッシュやナタリアでは、そういった性には潔癖な考えをまだ持っている可能性が高い・・・そう思うが故に、子どもが出来たことの発表はまずないだろうと見たのだ。









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